2014年05月01日

心肺蘇生の新ガイドラインG2015のトピックス



本記事のURL
http://jemta.org/index_140501.html
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

こんにちは。
AHA岡山BLS・JEMTA日本救命協会の久我です。


■1.はじめに
ご存知のように
1960年に、初めて人工呼吸と胸骨圧迫と除細動の3つが統合され、
1974年に、AHAは、Guidelines for CPR and ECC(1974)を初めてJAMAで公表し、
その後、ERCと共同してILCOR組織を作り、
2000年にGuidelines 2000 for CPR and ECC(2000)が公表されました。
(日本も岡田先生らのご尽力により、RCAとして2010年から正式にILCORに加盟。)
http://jemta.org/index_ilcor.html

以降、国際コンセンサスと各国のガイドラインは2005年、2010年と改定され、
来年の11月に新ガイドラインG2015が出版される予定になっています。

G2010については、以前、ILCORのQuestions2010の項目名のみ和訳しました。
 ・原文の順序での和訳
   http://jemta.org/index_ilcor2010q.html
 ・TaskForce名(ACS,ALS,BLS,EIT,NRP,Peds)順序
   http://jemta.org/index_ilcor2010q_abc.html
  Questions2010の項目は全部で302個ありました。

項目だけでも膨大なので、この中の1個のタスクフォース
BLS-004B(パブリックアクセスのAEDプログラム)を選んで、和訳しました。
検索にヒットした論文をあげ、その一つ一つの論文に対して
レビューアーのコメントが書かれています。全部で56ページありました。
http://jemta.org/index_ilcor2010q_bls004b.html


■2.新ガイドライン2015のトピックス
以下は、3月に京都で行われた第7回日本蘇生科学シンポジウム(J-ReSS)の
参加メモです。

−−集中治療領域における蘇生科学の実践−−
会   長:氏家 良人(岡山大学救急医学)
実行委員長:野々木 宏(静岡県立総合病院)
実行委員 :一般社団法人日本集中治療医学会、非営利活動法人NPO救命おかやま

トピックス:2015年ガイドライン作成での論点
1.BLS
http://jemta.org/index_140327.html
2.ALS
http://jemta.org/index_140328.html
3.EIT
http://jemta.org/index_140404.html
4.ACS
http://jemta.org/index_140410.html
5.小児
http://jemta.org/index_140415.html
6.新生児
http://jemta.org/index_140417.html

教育講演:ガイドライン作成方法の潮流
1.なぜILCOR はGRADE (グレード)システムを導入したのか?
http://jemta.org/index_140418.html
2.ガイドライン作成に役立つGRADEシステム
http://jemta.org/index_140430.html


■3.最後に
JRC会長の岡田先生はこのシンポジウムの最後の挨拶で
・今度のCoSTR2015は、GRADEシステムで作成される。
・本J-Ressで発表された咽頭冷却装置
 http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1402/28/news136.html
 を初め、日本発論文の世界貢献に期待する。
との2点を強調されていました。

JRC岡田和夫会長の「第7回J-ReSS報告」
http://jrc.umin.ac.jp/pdf/20140311J-ReSS.pdf

尚、次回の第8回日本蘇生科学シンポジウム(J-RESS)は、
2015年6月4日(木)9:00-17:00、富山県民会館で行われるそうです。
http://www.med.u-toyama.ac.jp/tedm/top.html

また今回の小児のトピックスで最初に講演の予定だった
清水直樹先生(都立小児総合医療センター)ですが、
救命おかやまの第9回定時総会・記念講演会で
小児の心肺蘇生の特別講演として講演される予定だそうです。
2014年7月12日(土) 17:45-19:30
岡山プラザホテル 2F「吉備の間」
http://npo-ok.umin.jp/
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


posted by jemta at 11:50| 日記

2014年04月30日

第7回日本蘇生科学シンポジウム(J-ReSS)参加メモ8 [ガイドライン作成に役立つGRADEシステム]



本記事のURL
http://jemta.org/index_140430.html
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
こんにちは。
AHA岡山BLS・JEMTA日本救命協会の久我です。

前回投稿の
第7回日本蘇生科学シンポジウム(J-ReSS)
参加メモ7 [なぜILCORはGRADEを導入したのか?]
http://jemta.org/index_140418.html
に続き、

教育講演:ガイドライン作成方法の潮流
「2.ガイドライン作成に役立つGRADEシステム」のメモです。[一部加筆しました]


尚、以下は如是我聞の私のメモですので、信ぴょう性には欠けます。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
2.ガイドライン作成に役立つGRADEシステム
  大田えりか(国立成育医療研究センター)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
[大田えりか氏 略歴
2001年聖路加看護大卒、2002年日本赤十字社助産師学校卒、東京都三楽病院で助産師
2006年東京大学大学院母性看護学助産学教室 保健学修士、2008年同大学院で保健学博士 
2009年東京医科歯科大学大学院リプロダクティブヘルス分野特任助教、
2010年エイズ予防財団リサーチ・レジデント、世界保健機関ジュネーブ本部
リプロダクティブヘルス部門でインターンで WHOの妊婦健診ガイドライン作成に携わる]

私は助産師なんですけれども、3年前にインターンでWHO に行っていて、その時に
ガイドラインを作成するお手伝いして、GRADE を学びました。

日本はEvidence-base で遅れをとっていることに気付いた。上司である森臨太郎先生が、
コクランの共同計画を日本に持ってこようと3年前からワークショップを始め、先月、
ようやく日本支部の許可をもらった。今は、コクランレビューを書いて著者を増やす仕事
をしている。「GRADE がはじめての方はいらっしゃいますか?」(半分以上が挙手)。今日
は初めての方向けの資料で説明します。


■1.GRADEシステムとは何か
GRADEシステムは、カナダのMcMaster(マクマスター)大学のDr.Gordon H. Guyatt
(ゴードン・ガイヤット)先生によって作成された。[David SackettとGuyattはEBM提唱者]
http://therres.jp/3topics/2011/20110525165004.php
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A0%B9%E6%8B%A0%E3%81%AB%E5%9F%BA%E3%81%A5%E3%81%84%E3%81%9F%E5%8C%BB%E7%99%82

GRADEシステムとはは、システマティックレビューや診療ガイドラインなどのエビデンスの
質評価や推奨の役立つアプローチ。
一番大事なことは、点推定値、系統的なレビューを行ってメタアナリシスをして、
リスクレイショの推定値が確からしいのか、本当にそれが効果があるのか、ないのかを
エビデンスの基としなければならない。それをガイドラインでシステマティックレビュー
でちゃんと評価しよう、わかりやすい評価基準を作って評価しようということになった。

GRADE の流れは、システマティック(系統的)レビューを行って、メタ解析をして、質の評
価をして、エビデンスプロファイルという表を作って、アウトカムごとにその質が高いの
か、中くらいか、低いのか、非常に低いのか、4段階の質にわける。 それを?毎にまた
全体的なエビデンスの質をつけてパネル会議をする。但しこのパネル会議はエビデンスの
質とは別に考える。エビデンスの質はベースにあるが、分けて別に考える。

さきほど、インプリメンテーションができるのがGRADE はすごいとの話があったが、
エビデンスの質は、4つのクライテリア(尺度)の一つでしかない。それ以外に利害と害の
バランス。副作用が強い薬は簡単には推奨はできない。これはエビデンスはあるがさすが
に勧めることはできないんじゃないかとか、さきほど、低体温症の話があったが、
エビデンスがあるからと言って一概に推奨していいのかとの議論がある。それをちゃんと
パネルで決めましょうと。

あとはコストの問題。非常に有用性があって副作用が少ない。しかしものすごく高い。今
は医療費が膨大に増加している。日本は、高齢化社会でそれにどのような説明責任をつけ
て資源を配分していくかということが非常に重要になる。それにどのような理由で、この
ような理由で、GRADE を使ってパネル会議をして、有識者かつ医療消費者も入れるのが
GRADE のルールだが、医療を使う側も含め、多種多様な人が集まって話し合って
ガイドラインを作っていく。そういう一連の流れを作ったシステム。まだ発展途上のシス
テムでもある。2000年から始まったが、まだ日々改善していっている。今、治療介入の
ガイドラインを主に伝えているが、これから診断のレビューとか、他の領域にも広がって
いく予定。

GRADEを使っている機関は、年々増えてきている。60くらいの機関が採用している。WHO、
CDC など世界の名だたる国際機関がGRADE に準じてきている。日本もこの流れに乗り遅れ
ないようにしなければならない状況にある。ILCOR の部会でも恐らく世界的な流れに準じ
る姿勢だと思う。ビデオのβ/VHS/ブルーレイの規格に似ているが、ISOと同じで、国際的
に統一して評価することで比べられる。


■2.なぜGRADEが必要か
なぜGRADE なのか、今までの評価では何故いけないのか?WHO が何故GRADE を採用したの
か?3年くらい前、WHO も以前は、今日本で行われているようなナラティブな(物語りと
対話に基づく)ガイドラインを使用していた。プロジェクトも、専門家がこれがいいんじ
ゃないかと考えたプロジェクトを行っていた。ただ、多くの医療の臨床、ガイドライン、
政策の決定がエビデンスに基づいていないんじゃないかということが問題になった。そし
てちゃんと系統的レビューをして、網羅的に検索をして、すべての知識を統合して、信頼
性のあるもの、効果のあるものを皆さんにインプリメントしていかないといけないんじゃ
ないかと。

たくさんプロジェクトで失敗した。多額なお金をかけて色々なことをした。しかし、うま
くいかないプロジェクトが多発した。それで失敗したら説明責任が伴うということで、プ
ロジェクトもガイドラインも必ずエビデンスに基づく、いちばんエビデンスのレベルの高
い系統的レビューをする、RCT のそのまた上の系統的レビューをしっかりすることが大事。
WHOのトップの方(LEE Jong-wook WHO Director General 2003-2006)が、
「知識に基づかない行動は無駄な努力であり、同様に、知識があっても行動しないのは、
資源の無駄だ。」と言われた。

しっかり今まで積み重ねてきたRCT を見直して、よりよい医療を皆さんに提供していきま
しょうと発言された。それから徐々にGRADE になってきた。WHO のガイドラインは全て
GRADE を取り入れることになった。そして系統的レビュー、コクランと共同して、GRADE
を使ってガイドラインを作り、プロジェクトを立ち上げていく手法に変換していった。

■表1.Oxfordスタイルの研究デザインとエビデンスレベルの評価
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
T 低 RCTのメタアナリシス
U   ランダム化比較試験(RCT)
V   比較臨床試験(Clinical contorl traial)
Wa  コホート研究(Cohort study)
Wb   症例対照研究(Case control study)
X   症例集積研究(Case series, case report)
Y 高 エクスパート・オピニオン(Expert opinion)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

■表2.Minds推奨グレード Oxford Centre for Evidence-based Medicine
推奨グレード      内容
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
   A   強い科学的根拠があり、行うよう強く勧められる。
   B   科学的根拠があり、行うよう勧められる。
   C1   科学的根拠はないが、行うよう勧められる。
   C2   科学的根拠がなく、行わないよう勧められる。
   D   無効性或いは害を示す科学的根拠があり、行わないよう勧められる。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

上の表1.で、一番いいとされているのがRCT のメタアナリシス、次にRCT、比較臨床試験、
コホート研究、症例対照研究症、例集積研究、そして最後にエクスパート・オピニオン。
一番バイアスが低いのは、メタアナリシス、次にRCT 。研究のデザインでそれぞれの論文
を評価して、それに推奨グレードをつける。

表2.のMinds 推奨グレードのA は、「強い科学的根拠があり、行うよう強く勧められる。」
となっている。この「強い科学的根拠」というのが、推奨と科学的根拠が一緒になってい
る。これが、GRADE では離れている。先ほど話があったが、エビデンスレベルが低くても、
インプリメンテーションが高いのがあるではないかということで、それが今のスタイルだ
と全部その研究デザインが落とされてしまう。例えば、質の低いRCT が一つでもあれば、
それはすごい高い推奨になってしまう。これが問題点の一つ。質の高い観察研究の
エビデンスよりも、質の低いRCT のエビデンスがレベルが高くなってしまう。

例えば、救急の方だと、観察研究、コホート研究、大規模なものを多施設でやるのはすご
いエビデンスレベルが高いものがある。デザインだけで評価していいのか?という問題点
がある。推奨を科学的根拠だけで判断してよいのか?コストや好みも副作用もある。そし
てそれを医療消費者がどう受け取るかという事もあるので、推奨を科学的根拠だけで判断
するのは本当は違うんじゃないかということでGRADE システムはできた。

GRADE の特徴は、価値観、好み、医療資源(医療費)の配分などを考慮して判定することに
ある。エビデンスに基づく強い推奨、コホート研究で非常に大きいものがあれば高い
エビデンスとして評価することもできるし、低くても専門家としてそれが非常に重要だと
いうことであれば、強く推奨することができる。そしてそれをどうして判定したのかとい
う理由を述べていくことで、判定の透明性を高める。デザインだけで決めるというのは、
サンプルサイズはどうか、本当にそのRCT はきちっとランダム化されたものなのか、とい
うバイアスの問題を全く無視している。そこをGRADE では一つ一つクライテリアを作って
判定の透明性を高めている。


■何故、今までの評価のままではいけないのか?利益相反の問題
では、今までGRADE といままでのガイドラインとどういう問題が起きているか?との点。
今世界で非常に問題になっているのは、利益相反の問題。ガイドラインも利益に利用され
ている面が多々あり、それを臨床家は気づかないことも多い。

イギリスとドイツで起きたある薬の問題の例。
ドイツでは前のMinds の形のOxfordスタイルでレーティングをした。RCT が5本あったが、
全て一番高いエビデンスレベルと評価され、そして強く推奨された。そして、もちろん、
ポリシーメーカーはそれを読んで、その病気の人はその薬を無料で受けられる保険点数が
ついた。

ところがイギリスのNICE(ナイス)ガイドラインではGRADE を取り入れていた。質の評価を
きちっとしているので、RCT であっても質が低いものを見抜いているので、一番高い
エビデンスレベルにはならなかった。低いエビデンスレベル、限界点、副作用、患者の好
みを考慮して、もし標準薬が効かなければ使ってもいいという、条件付きの政策になった。
医療費も抑えることができた。ところが数年たってわかったが、ドイツのガイドラインを
作った方がその会社からお金をもらっていた利益相反(COI )が明らかになっている。そう
いう方が一人でもガイドラインのメンバーに入っていると、Oxfordスタイルでは、
ガイドラインがその意志にひっぱられてしまう可能性がある。実際に起きている。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
■表3.高血圧の治療薬 標準薬と新薬の比較論文

       アウトカム1 アウトカム2    アウトカム3
       効能1    副作用1      副作用2
       血圧低下  脳卒中      突然死  
論文名 症例 標準 新薬 標準    新薬 標準 新薬
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 A   40  ○  ○  ×10/20  1/20   −
 B   120     ○    5/65 ×15/55     ×
 C   100     ○   20/55 ×28/45  ×  ×
 D   70  ○      3/38 ×9/32   −
 E   600     ○   -    -    −
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
○:より効果があった。   いずれもランダム化比較試験
×:より副作用があった。
−:記載なし

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
例えば、表3.は、高血圧の治療薬で、標準薬と新薬とどちらを推奨すればよいかとの論文
で、RCT が5つ見つかった場合。アウトカムとしては、血圧低下の効能、脳卒中の副作用、
突然死の副作用の3つがある。それぞれの論文はサンプルサイズも異なるし、実施国も異
なる。各アウトカム項目のないものもある。これをナラティブなレビューとして、以下の
表4.のように新薬に有効性があったトライアルだけを用いて、新薬を強く勧めることがで
きてしまう。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
■表4.新薬を強く推奨する説明
       アウトカム1 アウトカム2    アウトカム3
       効能1    副作用1      副作用2
       血圧低下  脳卒中      突然死 
論文名 症例 標準 新薬 標準    新薬 標準 新薬
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 A            ×10/20  1/20
 B
 C                     ×  ×
 D
 E         ○
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
新薬は論文Aより、脳卒中の副作用が低く、
論文Eより、血圧低下の効能があり、
論文Cより、突然死の副作用は標準薬と同じなので
新薬を強く勧める。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


反対に標準薬を進めたかったら、以下の表5.のように標準薬が効果がでている論文だけ
を使って、標準薬を強く勧めることができる。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
■表5.標準薬を強く勧める説明
       アウトカム1 アウトカム2    アウトカム3
       効能1    副作用1      副作用2
       血圧低下  脳卒中      突然死  
論文名 症例 標準 新薬 標準    新薬 標準 新薬
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 A      ○  ○
 B              5/65 ×15/55     ×
 C             20/55 ×28/45  ×  ×
 D      ○      3/38 ×9/32 
 E 
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
標準薬は、論文BCDにより脳卒中の副作用が少なく、
論文Dにより血圧低下の効能があり、
論文Bにより、突然死の副作用が少ないので
強く勧める。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

このように横に見ていくと、問題が起きてくる。論文ごとにアウトカムを選んで参考文献
をあげるのは問題がある。

そこでGRADE では、論文をならべて、アウトカム毎に、串刺しのように読む。メタ解析を
して、その信頼性が確からしいのかどうかを判断していく。ですので縦に論文をならべて、
それぞれのアウトカム毎に、串刺し図のように読む。アウトカム毎に統合した結果を読む。
GRADE のテーブルを作る資料を作成することと、その後に、診療ガイドラインの
パネル会議をしてガイドラインを作るという二つのプロセスがある。これは別々の人がや
ってもいいということになっている。海外ではなるべくシステマテックレビューは論文を
書いているような、大学のような機関に任せようということになっている。

■3.GRADE の長所と限界
・GRADE の長所は、国際的に共同して作成や評価ができる点がある。これによって比較が
 できるし、独りでやるよりも皆さんの財源を使ってできる。
・そしてエビデンスの質と推奨度を明確に分離している点。エビデンスレベルが低いとさ
 れても、強い推奨を出すことができる。または高いエビデンスレベルがあっても、弱い
 推奨を出すことができる。これが今までできなかった事。
・そして3つめに患者にとって重要なアウトカムは何かという、患者主体の視点に立って
 検討することができる。そしてパネル会議には必ず医療消費者の方を入れて議論し、
 医療消費者にもわかりやすく説明していく、説明責任につながっていく。
・4つ目はエビデンスの質の評価基準を明確化している。これには5つの要因がある。そ
 の基準を作っている。今までは研究デザインでしかみていなかったものを、しっかり中
 身まで見て、推定値の確からしさを検討していく。
・5つ目はエビデンスから推奨への移行プロセスを明確化している。こちらがパネル会議。
 そして、推奨書を作成するときに患者の価値観や好みも考慮している。医療消費者を入
 れてパネル会議をする。もちろん、最初のアウトカム設定のところでも、医療消費者を
 入れることができる。そして推奨度の解釈を明確化している。今まで推奨度の解釈はよ
 くわからなかったが、しっかり定義づけされている。

■では限界は何か?
・1つ目は、これは介入と治療に関して行われているので、予後や病因、リスクに関する
 疑問に対処していない。主に「治療と予防的な介入の効果をみているだけ」になる。
・2つ目は大義名分的な不明瞭に定義された一連の推奨事項に適用できない。エビデンス
 がないようなものに関してGRADE を適用していくのは非常に難しい。
 多くのガイドラインは、本当に検討が必要な事項だけをピックアップしてガイドライン
 を作り直している所が多い。本当にエビデンスがわからない所は、各臨床医の方に考え
 ていただくしかないので、そこがガイドラインとして必要なのか、そのガイドラインを
 出すことによって、本当に死亡率を下げることができるのか、影響する所だけをエッセ
 ンスをまとめて出す方が、医療の質の貢献になる。
・3つ目は、診断の研究は、エビデンスの質の判定基準の一部を改変する必要性が生じる。
 診断のレビューに関してのGRADE に関してはまた別のやり方が必要で、いま開発の途上
 にある。ただこれも徐々にできているので、論文がそろそろ発表されるのではないかと
 言われている。
・4つ目は、GRADE 適用対象外のステップについては、コクランなどに手引きを求める必
 要がある。他のものを参照する必要がある。コクランレビューやパネル会議後の推奨を
 モディファイ、デルファイ法を使うとか、GRADE 以外の他の手引きを求める必要がある。
・5つ目は、質判定の不一致を解消することを目的としたものではなく、その見解の不一
 致の本質的な理由を把握することを目的としている。


■4.GRADEの評価プロセス
まずシステマテックレビューをする。重要なのは網羅的な論文検索をすること。総説。
自分で検索して、MEDLINE でキーワードを入れてヒットしたもので、集めたエビデンスを
各論文と。コクランのシステマテックレビューでは、データベースを網羅的に検索する。
そしてデータベースごとに、キーワードを変えて、非常に大きな広い範囲で論文をとって
くる。特に日本の方が良く行っているのは、MEDLINE はPubMedを通して使うことができる
が、EMBASEというデータベースには、主にヨーロッパの論文が入っていて、MEDLINE には
収載されていない論文が多数入っている。EMBASEはデータベースに入っている期間が少な
いために、使われていないことが多い。

最強の3つのデータベースと呼ばれるものが、 MEDLINE、EMBASE、コクランのライブラリ
である。?http://jhes.umin.ac.jp/documents/3/report3.html
この3つで、ほとんどの重要なトライアル、RCT は網羅される。網羅的に検索している
システマテックレビューかどうかが非常に重要。

そして、疑問の定式機構と言われるPatient、Intervention、Control、Outcomeの4つの
リサーチクエスチョンをたてて、Outcomeを、重大、重要、重要でないに分けて、網羅的
にした検索の結果から、インクルードされる研究をアウトカム毎に評価して串刺しにする、
メタアナリシスをする。得られたメタアナリシスの結果から、RCT のエビデンスの質は、
Highからはじめ、観察研究はLowから始める。

グレードを下げる5要因は、@研究の限界、A結果の非一貫性、Bエビデンスの非直線性、
Cデータの不正確さ、D出版バイアスの5つ。

A結果の非一貫性は、リスコンバイアスという、系統的レビューで使う質の評価の項目を
見て決める。非一貫性は串刺し数がどのくらいひっせいがないかどうかを評価する。
Bエビデンスの非直線性は、直接にそのクリニカルクエスチョンの対象者を見ているのか
どうかで異なってくる。
Cデータの不正確さは、信頼区間がどのくらい狭いか広いか、これはサンプルサイズによ
るが、そこを評価する。
D出版バイアスは、発表されていない隠れた論文がないかどうか、ネガティブデータであ
るがゆえに出版されていない論文がないか調べる。それぞれについて、マイナス1、又は
マイナス2まで下げることができる。
-1.serious(likely)、-2.Very serious(likely)
下げた場合は、必ずその下げた理由を書いていく。この一つ一つについてどういう基準か
ということが細かく決められているので、それに準じて評価をしていく。

そして観察研究の場合は、「GRADE を上げる3要因」という復活性が残されている。これ
は、RCT の場合はつけない。観察研究の時のみ、例えば効果が非常に大きい場合、または
明らかな交絡因子があるので、本当は効果が高いのに低く見えている場合などはGRADE を
上げることができる。GRADE の特徴としては、観察研究でもエビデンスのレベルが高くな
る復活の可能性があることが、非常に以前とは違う動きになっている。

■エビデンスの質の評価
body of evidenceでは、エビデンスの質を4段階に評価する。これがエビデンスの質の評
価、GRADE のエビデンスのプロファイルの表を作るところまでになる。これを基に、
パネル会議で、エビデンスの質、利益/不利益のバランス、価値観や好み、コストや資源
の利用など、全部で4つの項目を基に推奨を出す。この推奨は2つのレベルしかない。強
い推奨を出すのか、弱い推奨を出すのか。又は、強く推奨しない、弱く推奨しないという
反対側もある。推奨というのは、エビデンスの質だけではなく、他のものを考慮してこの
4つで決める。

■ReVManとGRADEpro
ReVManというフリーソフトは系統的なレビューを作るためのソフト。ぜひ、皆さんご自分
で「ReVMan download」で検索してダウンロードしてみてください。
http://tech.cochrane.org/revman
MacでもWindows でも使用ができる。
これを用いて串刺し図を作り、それをGRADE profiler(グレードプロファイラ)に
エクスポートすることができる。エクスポートすると、非常に簡単に一瞬で表を作ること
ができる。GRADE で一番時間がかかるのは、系統的レビューを行うところ。網羅的に検索
して、その論文を1個1個チェックして、バイアスがあるかどうかを読み込んで、そして
評価するという、系統的レビューのプロセスが非常に時間がかかる。
もしそれが、コクランレビューで自分の Research Question(リサーチクエスチョン)が出
ていた場合は、非常にラッキーで、そのrevman(レブマン)のファイルをもらって、それを
GRADE profilerに入れて、さきほどの5段階の評価をするだけで、あっという間に評価で
きる。レビューさえあれば非常に簡単にできる。レビューを作るところまでが非常に大変。

■結論
・診療ガイドラインは、入手可能な最良なエビデンスに基づくべきである。
・意思決定や判断において透明性が鍵となる。
・GRADE アプローチ
 -simple、transparent、systematic

GRADE が望んでいることは、簡単に、これがシステマティックに行われていくこと。
コクランレビューもそうだが、1回ベースラインを作ってしまえば、あとはアップデート
だけしていけばいい。最初は時間がかかるが、その後10年後、20年後、ちょっとRCT がで
たら、自動的にグレーティングできるようなレベルまで行こうという方向性で考えている。

詳しくは、相原先生の教科書がAmazonで売られている。これは治療介入のみのGRADE だが、
非常に詳しく翻訳されてまとまっている。ぜひご覧ください。
また、GRADE のワークショップも東京で次回5月24日に行いますので、もし、参加され
たい方はぜひ参加していただけたらと思います。
http://ebm.umin.ne.jp/workshop.html
前回は、岡田先生と野々木先生が大雪の中、2月9日に来ていただきました。
ありがとうございました。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

尚、これまでの参加メモ1〜8のまとめは、このあとの記事で投稿する予定です。
心肺蘇生の新ガイドラインG2015のトピックス
http://jemta.org/index_140501.html


posted by jemta at 16:38| 日記

2014年04月18日

第7回日本蘇生科学シンポジウム(J-ReSS)参加メモ7 [なぜILCORはGRADEを導入したのか?]



本記事のURL
http://jemta.org/index_140418.html
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
こんにちは。
AHA岡山BLS・JEMTA日本救命協会の久我です。

前回投稿の
第7回日本蘇生科学シンポジウム(J-ReSS)
参加メモ6 [新生児]
http://jemta.org/index_140417.html
に続き、

教育講演:ガイドライン作成方法の潮流
「1.なぜILCOR はGRADE (グレード)システムを導入したのか?」のメモです。


尚、以下は如是我聞の私のメモですので、信ぴょう性には欠けます。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
1.なぜILCOR はGRADE (グレード)システムを導入したのか?
  野々木宏(静岡県立総合病院)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
・よろしくお願いします。さきほどからGRADE (グレード)という言葉がでてきて、これは
 何だと思われたと思いますが、私たちもそうでした。さきほどの2015年の時にILCOR が
 GRADE を採用した際、GRADE とは何だろうと思いました。本来最初のセッションは十分
 時間をとっていましたので、たぶん時間があるだろうと思っていましたが大分遅れてい
 るので、私は短くしてその後の大田先生につなげたいと思います。

・GRADE とは何だろうと思った時に、日本の中で、国際的なGRADE のワーキンググループ
 に所属されている弘前の相原先生からテキストがでていることに驚いた。
 http://www.grade-jpn.com/
 そこで、相原先生にお願いをして、ILCOR がGRADE を導入したので勉強会をしたいので
 ぜひ私達に講義をしていただきたいと申し入れをした。しかし弘前から出てくるのが大
 変だとのことで、今日の大田先生を紹介いただいた。
・大田先生に2度3度と色々と教えていただいて、やっと私どもは概要がわかったので、
 後ほど太田先生にレクチャーをいただこうと思う。
・レビューに関してはさきほどからでているので、これ以上ILCOR が何故という説明は僕
 は要らないと思う。

・先ほどの低体温で、Randomized Study1編でこれほど左右されるかもしれない時に、今
 まで、RCT(Randomized Conrtrolled Trial;ランダム化比較試験)1編でガイドラインが
 引きずられる可能性があった。(RCT1編の報告で、Level1の勧告となっていた。)
・ところが、このGRADE を用いると、さきほどGabrielli 先生も仰った通り、アウトカム
 が重要だというところで、この1本に左右されるということが、恐らくなくなるだろう
 ということがGRADE を採用した大きな事だと思う。
・今までだと、論文を1編ずつを検討して、RCT があったり、メタ解析をやると、もう相
 当それでレベルがあがってしまう。ところが今回のこのGRADE を使うと、アウトカムの
 中に含まれている文献をすべてレビューをするわけなので、1編に引きずられることが
 ないところがGRADE の今回の大きな進歩だと思う。

・これはご存じの通り、ガイドライン2010の時のもので、このようなテーブルがあった。
 このスタディの中には、ここにRCT が入っている。結局このRCT に引きずられていた。
・今回それをなくそうということで、システムを導入した。今回はGRADE を使う。色んな
 アウトカムごとの評価が定まれば、その都度出していこうというのが今回の2015の特徴
 なので、おそらく2015年に間に合わないという恐れを、たぶんILCOR は思っていないの
 ではないかと私は思う。というのは、その都度出していこうということで、彼らはこれ
 をアイ・コスター(i-CoSTR?)と読んでいる。Web ベースでたぶん毎年毎年トピックスで
 出してくるのではないかと思う。
・あと負担の軽減と、GRADE を用いたことで、現在我々は、この作業をしている。GRADE
 は推奨しているのは、コクラン(Archibald Cochrane;コクラン共同計画の提唱者)
 ?http://en.wikipedia.org/wiki/Archie_Cochrane
 のレビューをそのまま使う。無料で誰でもダウンロードできる、このReview managerを
 使うとメタ分析が非常に容易になる。 
 ?http://tech.cochrane.org/revman/other-resources/gradepro/download
・いくつかの論文をアウトカム毎の評価をして、メタ分析をして、サマリーを作って、最
 終的にCoSTR に載せていくという形がとられる。今までの作業よりはずいぶん客観的な
 評価ができるようになるのではないかと思う。
・最終的にCoSTR を作るわけだが、最終的にこのように4段階の評価をする。
・これではGRADE とは何かというのがわからないと思うので、早速太田先生の方から、解
 説を賜りたいと思います。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
教育講演:ガイドライン作成方法の潮流
「ガイドライン作成に役立つGRADEシステム」については、このあとの記事で投稿する予定です。

第7回日本蘇生科学シンポジウム(J-ReSS)参加メモ8
[ガイドライン作成に役立つGRADEシステム]
http://jemta.org/index_140430.html

posted by jemta at 17:12| 日記

2014年04月17日

第7回日本蘇生科学シンポジウム(J-ReSS)参加メモ6 [新生児]



本記事のURL
http://jemta.org/index_140417.html
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
こんにちは。
AHA岡山BLS・JEMTA日本救命協会の久我です。

前回投稿の
第7回日本蘇生科学シンポジウム(J-ReSS)
参加メモ5 [小児]
http://jemta.org/index_140415.html
に続き、

トピックス:2015年ガイドライン作成での論点 [新生児]のメモです。

尚、以下は如是我聞の私のメモですので、信ぴょう性には欠けます。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
6.新生児 田村正徳(埼玉医科大学)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
・最初にお断りしておきますが、ILCOR と(秘密保持?)契約を結んでいない方もおられ
 るんじゃないかと聞かれたので、そうだと言うと「絶対余計なことをしゃべるな」(笑)
 と言われましたんで、非常にあいまいなことしか入っていません。ですのでPICO10を入
 れていません。期待されている方々には申し訳ありません。
・今日私が述べさせていただきますのは、Consensus 2010の時に新生児部門で、ずいぶん
 大きなカーブがありました。

・それまでは、生まれた時に赤ちゃんの胎便で羊水が混濁している時には、それを積極的
 に吸引しましょうということが2005年のガイドラインであったが、それがまずなくなっ
 た。
・生まれてすぐの赤ちゃんの皮膚の色は、SPO2が非常に低い所からだんだんあがってくる
 のであてにならない。ばっそく?をしめたり、きちんと測りながら評価することになっ
 ている。
・羊水が混濁している時も、気道内をルーチンに吸引する必要はないということがでたこ
 とに関しては、実はこれはやってはいけないということではなく、やったからといって、
 胎便吸引症候群(MAS) を防止できるエビデンスがないからということで、これが外され
 た。これに関して現在ILCOR のグループが中心になって、国際的な共同試験をやってお
 り、その結果によっては、ひょっとするとまた復活するかもしれない状況。

・それから、前回のCoSTR2010 で大きく変わったことの一つが、生まれてすぐの赤ちゃん
 の蘇生で、過剰な酸素投与は避けるという点。これは未熟児の網膜症については、昔か
 ら問題になっていたが、タームの赤ちゃんについても、神経学的にも、呼吸の誘発とい
 う点からも、色々問題があるということで、これも回避しなさいということ。これが大
 きく変わった点である。
・それに対して、2015年に向けて残されている問題は、もしこれを実施しようとすると、
 当然のことながら、パルスオキシメーターを分娩施設に全て用意しないといけないし、
 酸素ブレンダーも用意しないといけない。そのときの酸素のSPO2をつけなさいというの
 であるが、その時、どれくらいのSPO2をターゲットにすべきか、このあたりが実は課題
 として残っている。
・特に日本の場合は皆さんご存知のように、お産の半分くらいが病院ではなく、
 クリニックとか助産所などで行われている。当然そこには、小児科医がいないし、それ
 から、さきほどあげたパルスオキシメーターとか酸素ブレンダーがない状況。
・CoSTR が発表される前の2010年の段階と、昨年で、これは周産期センター、これは産科
 のクリニック、これは助産所であるが、ここに対してアンケート調査をした所、新しい
 CoSTR2010 がでて、助産所も70% くらいは用意できるところまでいっている。しかし、
 酸素ブレンダーとなると、周産期センターと言われている所でさえも、分娩室で用意さ
 れていない。助産所などではそれらは全く用意されていないこともわかった。

・そのような場合に、どういうふうにして、酸素の過剰投与を控えるかということが、
 実は今CoSTR2015 に向けて問題になっている。
・それにからめて、我々の研究グループでやっていることは、お金のかからない方法とし
 ては、自己膨張式のバックに酸素をつけて流すことである。これが一番お金のかからな
 い、100%酸素でない酸素を流すやりかた。これで酸素の流量と、新生児の場合は蘇生の
 時に1分間に40〜60回が推奨されているので、40〜60回の回数で、気道内圧も20〜35く
 らいが推奨されているので、そのあたりの圧と、酸素分量を組み合わせることによって、
 酸素ブレンダーがなくても、ある程度の酸素濃度を調節できないかと。
・実際に日本で使われている各種の自己膨張式のバックに、さきほどの手法を組み合わせ
 ることによって、それぞれのバックにおいて、流量がいくらで、換気回数がいくらで、
 吸気圧をどれくらいにしたらよいか、調査をして、データを出した。これを使えば、そ
 れぞれの施設で、ブレンダーがなくても吸入酸素濃度を調節できる。

・それから、どれくらいのサチュレーションをターゲットにするかについては、我々があ
 る会社と提携してパルスオキシメーターに蘇生を開始した時からのパルスオキシメーター
 の値がブレンドでひけるようになっている装置を使って、我々の施設で正常なタームの
 お産で、蘇生を必要としなかった子どもの酸素飽和度の生後10分間のデータを集積した。
 このデータが、標準的なターゲットとなるSPO2の指標を決めることに結びつくと思う。
 我々だけではなく、ILCOR に加盟している各国でターゲットとなるSPO2を議論するため
 に今、データを持ち寄っているところ。

・もうひとつ。CoSTR2010 の時は、Delayed Cord Clamping と言って、臍帯(さいたい)を
 結紮(けっさつ)するのを1分くらい待った方が、胎盤から赤ちゃんに十分血液がいって、
 赤ちゃんの循環動態が安定する、それから将来、貧血で輸血をする回数も減るので、臍
 帯の遅延結紮が推奨された。
 ?http://tyama7.blog.ocn.ne.jp/obgyn/2011/01/post_dbd0.html
・これの問題点は、早産児の場合に、はたして遅延結紮に、メリットがあるのかどうか。
 それから特に蘇生を必要とする場合に、1分間蘇生を待って結紮を遅らせることは、危
 険ではないかとの議論がある。
・それに代わるものとして、これは、日本で始まった方法だが、臍帯血のMilking
 (ミルキング)といって、臍帯を30〜40cmくらいの所でクランプしたものをしごいて、時
 間がたたないうちに、できるだけ瞬時に胎盤から赤ちゃんの方に血液を輸血する方法が
 ある。
・これをすれば蘇生が必要な仮死の赤ちゃんでもDelayed Cord Clamping と同じ効果が得
 られるのではないか−−−。これがひとつの2015年に向けたトピックスになっている。
・これに関しては、今日も会場に来ておられる日本大学の細野先生が日本で多施設の共同
 研究をやっている。?http://www.aiiku.or.jp/~doc/houkoku/h24/19006B080.pdf
 ちょうど今データ集積が終わった所で、ミルキング群とコントロール群でそれぞれ100
 くらいのデータを得た。それで、今得られているデータに関しては、生まれた時の
 ヘモグロビンの値で有意にミルキングした方がいいという結果。このあと、輸血が必要
 になるか否か、循環動態については、これから解析していただく予定。

・最後に新生児領域においてはCoSTR2010 で中等度から重度の仮死に対して低体温療法が
 標準的な治療として推奨されるようになった。CoSTR2010の適用でよいのか、それから
 プラスアルファの治療法があるかが、今問題になっている。
・日本でもCoSTR2010 がでる前に我々が調査した所では、低体温療法をやる施設が全くな
 いような県も多かったが、昨年の調査では、そういうことが解消されている。一応日本
 でも、CoSTR が推奨するやり方が一般的になってきていることがわかっている。
・今、我々は登録事業をやっている。順調に低体温療法の登録症例がどんどん増えている。
 こういったものを分析することによって、CoSTR2010 で推奨した適用をもう少し広げる
 ことができるかもしれない。

・もう一つは、この低体温療法を行っても、実際に低体温療法を行ったことによって脳性
 麻痺を防げる患者は、9人から10人に1人ということになっている。つまり、あとの
 8人から9人くらいの子供は低体温療法だけでは脳性麻痺を防げないわけで、低体温療
 法と組み合わせた、プラスアルファの治療が重症仮死に対しては必要ではないか。
・これは我々がやっている動物実験だが、仮死のノーベルをつぐんで?、これに本人の
 骨髄から採ったステンドセル?を投与することによって、日数が2日とか3日とかたっ
 た後でも、そのような治療を加えることによって、脳性麻痺が軽減できるのではないか。

・この辺が、CoSTR2015 に向けての、今、新生児グループで話題になっているところ。
 以上です。どうもご静聴ありがとうございました。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
教育講演:ガイドライン作成方法の潮流
「なぜILCORはGRADEを導入したのか?」については、このあとの記事で投稿する予定です。

第7回日本蘇生科学シンポジウム(J-ReSS)参加メモ7 [なぜILCORはGRADEを導入したのか?]
http://jemta.org/index_140418.html

;
posted by jemta at 18:06| 日記

2014年04月15日

第7回日本蘇生科学シンポジウム(J-ReSS)参加メモ5 [小児]

第7回日本蘇生科学シンポジウム(J-ReSS)参加メモ5 [小児]


本記事のURL
http://jemta.org/index_140415.html
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
こんにちは。
AHA岡山BLS・JEMTA日本救命協会の久我です。

前回投稿の
第7回日本蘇生科学シンポジウム(J-ReSS)
参加メモ4 [ACS]
http://jemta.org/index_140410.html
に続き、

トピックス:2015年ガイドライン作成での論点 [小児]のメモです。

尚、以下は如是我聞の私のメモですので、信ぴょう性には欠けます。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
5.小児  新田雅彦(大阪医科大学)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
・岡田先生、過言なご紹介ありがとうございます。本来でしたら都立小児総合医療センター
 の清水直樹がお話するはずでしたが、日本集中治療医学会のほうでシンポジウムをやっ
 ていますので私が今回代理で発表させていただきます。
・はじめにお断りしておきますが、私はタスクフォースではありません。清水先生にどう
 いうお話をすればよいか相談したら、「だいたいこうゆうことを話しておいたほうがい
 いんじゃない」と言われました。今日は、皆さんには10トピックスをお示しできませ
 んし、その次のトピックスもお示しできません。
・ただ私はこの前のWorksheet Authorをやり、JRC のガイドラインを作成した立場から、
 どちらかというと皆さんに近い立場でお話させていただきたと思います。

・これが、CoSTRの2010。 小児のワークシートとしては約60のトピックスがでた。最終的
 には56のワークシートが完成された。2010年のトピックスとしては、CPR 、除細動、
 挿管、薬剤、酸素傷害、低体温、ECMO CPR、MET(Medical Emergency Team)、
 敗血症性ショック(septic shock)、エスカンナ?など。
・このCoSTRからJRCのガイドラインができた。ガイドラインを作成していく上では流れが
 大事なので、その流れを基に次の2015年はどういう論点なのか、自分なりに考えてみた。
・これは2005年のガイドライン。この時は、骨子(骨組み)だけ。それが5年後にはJRC
 のガイドラインでは、肉付けされて、非常に厚い本になった。僕も通勤途中に持ち歩い
 ているが非常に重くて、肩が凝るほど。
・2005年から2010年のガイドラインで一番大きなトピックスは、救命の連鎖が変わったと
 いうことは皆さんご存知だと思う。今までは成人の救命の連鎖、小児の救命の連鎖、そ
 の2つが日本にはあった。新しいJRC のガイドラインでは、成人と小児の救命の連鎖を
 分け隔てなく、一つの救命の連鎖にした。これに関しては我々小児のグループは、非常
 に大きな提言をした。小児の心停止の事象は非常に少ない。その少ない事象のために、
 二つの救命の連鎖を作ることが本当に正しいことなのか。できるだけ大人と子供で隔て
 なくシンプルにするコンセプトが非常に大事だと考えた。小児で一番大事なものは予防
 だが、救命の連鎖を予防にしていただいて、大人も子供も一緒にしましょうと提言して、
 JRC の救命の連鎖ができた。
・2010年のJRC 以外の他の国のガイドラインはどうか?アメリカではまだ子供と大人を分
 けている。4つの鎖が5つになっている。ERC は2005年から2010年に関しては、ロゴは
 変わっていないが、小児に関しては必ず注釈がついている。日本だけが大人、子ども、
 隔てなく一つの救命の連鎖であることは、我々としては非常に誇るべきことだと思う。
・AHAにはこれ以外に、ACSの救命の連鎖、Stroke(脳卒中)の救命の連鎖と、鎖がたくさん
 あって、こんがらがるのではないかと僕はちょっと心配している。
・次のトピックスの論点を一つご覧ください。日本は、救命の連鎖のロゴをもっとカッコ
 よくできないかというのを論点にしていただきたいと思う。(笑)
・冗談はさておき、BLSから話していきたい。
・これは日本版のアルゴリズムで、2005年、2010年のもの。ここでは心停止の判断基準が
 変わった。CPR は胸骨圧迫から開始する。−−−「そんなことやってて本当にいいの?」
 僕は実際このガイドラインを作って、小児グループからひょっとして、ギロチンにかけ
 られるんじゃないかと危惧した。そんな想いの中、このアルゴリズムを作った。
・これはガイドラインからの引用だが、成人および小児のCPR で、2回の人工呼吸から開
 始するのではなく、30回の胸骨圧迫から始めた方がいいとするエビデンスはない。
・小児は呼吸原性なので、人工呼吸付きのCPR がいいということは皆さんご存知だと思う。
 これを実際に証明したのは、今回の演者である石見先生や後半である北村先生のLancet
 の論文 。呼吸原性の心停止に関してはCC-OnlyよりもCC+RBの方が5.5倍オッズがいい。
 ?http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtnews/2010/M43200521/
・小児のグループとしてはどういうことを考えるかというと、よくよくこの論文を見てみ
 ると、院外心停止のケースで、No-CPRよりも、CPR をしてもらった方が、オッズとして
 は3倍近く予後がよくなっている点がある。如何にCPR を実践してもらうかということ
 が小児においても大事だと思う。
・実際このシーケンスが変わったので、シーケンスが変わったあとで、どちらがいいのか、
 ということが恐らくこのトピックスの中に挙げられていると思う。
・清水先生からは10トピックを全く教えてもらっていない。今回の坂本先生、石見先生、
 野々木先生の講演は10トピックが最大のうりなので、教えてくれてもよかったかなと
 思っている。恐らく、CABのCPRとABCのCPRとどちらがいいのかといことも議論されてい
 ることだと思う。
・その次に胸骨圧迫のみのCPR について。まさにこのデータが示しているように、
 人工呼吸付のCPR の方がよいというのは結構だが、市民救助者で人工呼吸ができない時
 は、少なくとも胸骨圧迫のみのCPR を施行すべきである。これは小児の蘇生も同様。
 やはり、さきほど示したように市民救助者が如何にCPR をしてくれるかが大事。小児に
 おいても。さきほど石見先生がだされたが、これはAHA の戦略だが、僕らはAHA と相談
 したわけではないが、やはり如何に市民救助者がCPR をしていただくかを考えていかな
 くてはいけない。子どもにおいても、胸骨圧迫のみCPR の効果を考慮すべき。
・これは先ほどの論文だが、心原性の心停止に限れば、ほとんどCC+RB とCC-Only で変わ
 らない。
・これはCoSTRのCompression Only のCPR のknowledge gap を引用しているが、CC-Only
 のCPR が市民救助者にどれくらい効果があって、それがどれぐらい実践に、どういうふ
 うに予後に反映されているかという点が、次の問題点になる。

・以上BLS の話をしたが、次にALS の話をする。
・これは2005年、2010年のアルゴリズムのボックスだけをもってきたもの。ここで変わっ
 てくるのは、皆さんご存知のように、小児の除細動のエネルギーが変わった。しかし、
 除細動のエネルギーに関しては、現在のエビデンスでは適切かつ安全有効なエネルギー
 量はいまだに不明。
・この5年間に新しい論文がでていると思うが、それがこの図にどう反映されるかはまだ
 議論があるところ。
・このアルゴリズムのもうひとつの大きな違い。それは、一つ箱が大きくなっている。こ
 こは、集中治療学会の会員の皆さんが非常に得意とされる所だと思うが、心拍再開後の
 モニタリングと管理。これのそれぞれ一つ一つがトピックスになっていると思うが、特
 に吸入酸素濃度と体温管理に関しては、子どもにおいても、やはり一番大きなトピック
 スになっているようだ。
・蘇生後の吸入酸素濃度に関しては、今日の夕方、黒田先生からお話があると思う。
 2010年のガイドライン出版の時点では、まだ動物実験のレベルまでしかエビデンスがな
 かった。
・ところがガイドラインが出るか出ないかくらいの時点で、皆さんご存知のように、JAMA
 の論文がでた。?http://intmed.exblog.jp/page/424/
 蘇生後の高酸素血症は成人のICU においては、正常と比較して高酸素血症は院内死亡率
 リスクの増加と独立して相関している。
・それから約1年後、イギリスのグループが、小児においても、同じようなコホートの研
 究を行っている。小児においても低酸素血症のみならず、高酸素血症は死亡率の上昇に
 影響するという論文がでている。次のガイドラインは、小児においてもこのへんは非常
 に大きなトピックスになると思う。

・あとは低体温療法。
・低体温療法に関しては、新生児を除いて子どもにおいては、高体温は積極的に治療する
 べきであるというエビデンスはでている。小児においてはこの段階でもやはりエビデン
 スはなかった。それから5年たつが、これは2013年に出されたコクラン・レビュー。
 このレビューでも低体温を奨励や否定をするエビデンスはこの段階では全くない。
 低体温療法の導入を試みたこと自体、何のコントロールスタディが全くないので、ガイ
 ドラインで、本当にこんなこと言っていいのかとの議論がある。
・最近、成人領域では低体温と平常体温との効果があまりかわらないということもあるの
 で、一時、低体温の方に流れが向かっていたが、成人においても小児においても低体温
 に関してどうなのか、非常に注目したいところだと思う。
・あとは特殊な治療。まだ日本では、ECPRができる子どもの施設は限られている。これを
 次の日本のガイドラインではどのように活用していくのか。
・あとEIT 、MET 、CCRT。この件に関しても、どちらかというと、小児病院のデータが結
 構多くなっている。これを日本に関してどういうふうに導入するか、小児にとっても、
 考えていかねばならない。
・以上、簡単ですが、BLS 、ALS に関して僕の立場から見た論点を説明した。ありがとう
 ございました。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
新生児については、このあとの記事で投稿する予定です。

第7回日本蘇生科学シンポジウム(J-ReSS)参加メモ6 [新生児]
http://jemta.org/index_140417.html

*追記
救命おかやまの第9回定時総会・記念講演会で
清水直樹先生(都立小児総合医療センター) の
小児の心肺蘇生に関する特別講演が予定されています。
2014年7月12日(土) 17:45-19:30
岡山プラザホテル 2F「吉備の間」
http://npo-ok.umin.jp/


posted by jemta at 17:24| 日記

2014年04月10日

第7回日本蘇生科学シンポジウム(J-ReSS)参加メモ4 [ACS]



本記事のURL
http://jemta.org/index_140410.html
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
こんにちは。
AHA岡山BLS・JEMTA日本救命協会の久我です。

前回投稿の
第7回日本蘇生科学シンポジウム(J-ReSS)
参加メモ3 [EIT]
http://jemta.org/index_140404.html
に続き、

トピックス:2015年ガイドライン作成での論点 [ACS]のメモです。
(急性冠症候群 ACS :acute coronary syndrome)

尚、以下は如是我聞の私のメモですので、信ぴょう性には欠けます。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
4.ACS   野々木宏(静岡県立総合病院)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
・ACSのタスクフォースを担当しています野々木です。よろしくおねがいします。
・2010年11月に、ILCORのCoSTRに沿ってAHA、JRC、ERCのガイドラインが同時に作られた。
・次回は2015年11月に予定されている。
・いままでのお話を聞いていると本当に間に合うのかと思われるかもしれないが、これか
 らの1年というのは、私たちは大変だと感じている。
・先ほど坂本先生から話された通り、JRCは2010年には英語版も作ってILCORのホームペー
 ジに掲載された。英語で各領域のものを作成した。本来はこれはアジア蘇生協議会RCA
 からでるべき内容だったが、JRCが率先して行った。
・2015年はRCA がどの程度、英語版のものを作るか、これから議論になる。それに応じて
 日本版を作る形になると思う。
・2010年に各タスクでは、ギャップという形で課題を残したものがあった。
・これはACS の領域のもの。
・残された課題の中から優先的に、皆で投票して、まず10個のPICOを選ぶ作業をした。
・その中で、ここに赤字で示したものが、今回議論になりそうなもので以下紹介する。
・例えばこれは日本でも課題になるが、救急隊員による12誘導心電図の判読、あるいは、
 伝送の話題。判読と伝送とコンピュータによる自動解析でどの方法がよいのかが課題。
・あとは再灌流療法を如何に時間を早くするか。今はPCI がかなりメインになっている。
 しかしPCI をやろうとすると相当の時間が必要になってくるので、それを行うための時
 間を短縮する作業が必要。この中には、血栓溶解療法も見直すべきという議論もある。
・それから、新しい薬物(血小板薬、抗凝固薬)を救急の場面でどう使うかの議論。
・これらは前回課題として残ったもので、それを優先的に検討しようとしている。
・時間経過については、2010年のJRC のガイドラインにもあったように、こういうことが
 2010年に謳われていているが、まだまだ解決していない状況がある。
 例えば、ACS を発症して、再灌流療法までの時間がかかりすぎるという状況がある。今
 勧告がでているのは発症から2時間以内であるが、これはほとんど達成できていない。
 2015に至っても、おそらくこれは課題として残ってくる。
・その中で、例えば救急隊接触からカテーテル治療までを90分以内にしなさいとの勧告を
 守ろうとすると、かなり、地域の救急システムを作り直す必要がある。
 その中にも12誘導心電図を救急隊が採って、それを何らかの方法で情報伝達することが
 謳われている。
・2010年と2015年の間の、2013年に各国のACS に関するガイドラインがでている。
 ILCOR、AHAのガイドラインを大きく参照することになる。ERC やヨーロッパ蘇生協議会
 以外のヨーロッパ心臓病学会(ESC:European Society of Cardiology)のガイドラインを
 参考にする。
・2013年のAHA のガイドラインでは、ST上昇型の心筋梗塞では、まずトリアージで、
 カテーテル治療が可能な病院を選択しなさいと勧告されている。そこでさきほどの話で
 接触からカテーテル治療まで90分以内にしなさいとの勧告がされているわけだが、例え
 ばトリアージできなくて、PCI ができない施設に行った時にどうするのか。ここは今回
 でてきたのが、PCI のできる病院に転送するときに、最初に搬送された病院から、次の
 転送先までの時間(door-inからdoor-out )を30分以内にしなさいという勧告。ここが
 時間が時間がかかりすぎている。
・そこから以降、2時間以内というデータがあるようで、ここが勧告されている。
・じゃあ、「これが間に合わない、30分以上かかりそう」な時にどうするか。その場合は
 30分以内に血栓溶解療法をしなさいという組み合わせが勧告されているので、
 ガイドラインでこのように勧告されたら、恐らく日本でも、見直す必要がある。
・GRADE システムについては、あとで大田先生の方から解説がある。今回この点が大きく
 変わってきた。ILCOR はこの作業がでてきたために、システムの改変にかなり作業が遅
 れていた。しかし、やっと完成したようなので、これから作業がスピードアップされる
 と思う。
・今回、ILCOR はGRADE を導入したと共に、個人の負担をできるだけ取ろうということで
 一つは このようにsearch strategy(文献検索)は、ライブラリアン(librarian: 専門的
 文献管理責任者?)がきちんと作って、タスクフォースで決めることになったので、ここ
 は個人の負担がとれてかつ、文献収集もライブラリアンがするので、ここでも若干負担
 がとれるという話になっている。
・ただ、各文献の評価は各Worksheet Authorに委ねられるので、そこは前回と負担は変わ
 らない。それからレビューをして、 コクランのレビュー(Archibald Cochraneによって
 提唱されたEBM に基づいたシステマティック・レビュー? )と全く同じような作業をす
 る。今回コクラン・レビューのような国際的に標準化されたレビューシステムを使う。
・それから推奨もGRADE に応じたものを使う。
・これはILCOR のACS のタスクフォースで、さきほどお話があった通り、各協議会から2
 名出ているが、ここに私がでている。それぞれのタスクに日本から必ず1名入っている。
・さきほどからでているように、トップ10のPICOが投票で選ばれている。
・さきほどお話した通り、前回2010年のギャップの課題があり、再灌流療法の方法と時間
 遅延をどうするか、ここだけでも再灌流療法の7つの課題があり、再灌流療法が一番大
 きな課題。
・それから、抗血栓薬と診断(プレホスピタルの12誘導心電図をどうするか)。
・次の10個のPICOも既に選ばれている。この中には、さきほどの抗凝固療法を救急の場面
 でどう使うか、或いは救急隊がこれを使うのか、使わないのかが議論されている。
・それから診断に関しては、12誘導心電図。先ほど話した通り、これをコンピュータの
 自動解析をするのか、或いは救急隊が判読するのか、或いは伝送して医師が診断するの
 か、これから議論される。
・ACS ガイドラインの論点のまとめとしては、発症から再灌流療法までを定義?するのが、
 2015年の大きなガイドラインの議論になりそう。その中のテーマとして、12誘導心電図
 をどうするのかという点と、カテーテル治療、血栓溶解療法がある。
・それから心拍再開後のケアの中に、低体温療法とともに、カテーテル治療の組み合わせ
 が、ACS のほうでも、検討される。
・それから抗血栓薬、適切な診断方法として新しいバイオマーカーとか、画像診断に、
 (これは全体に通じるが)GRADE システムを使用していく。
・以上がACS の報告。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
小児については、このあとの記事で投稿する予定です。

第7回日本蘇生科学シンポジウム(J-ReSS)参加メモ5 [小児]
http://jemta.org/index_140415.html


+
posted by jemta at 18:16| 日記

2014年04月04日

第7回日本蘇生科学シンポジウム(J-ReSS)参加メモ3 [EIT]



本記事のURL
http://jemta.org/index_140404.html
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
こんにちは。
AHA岡山BLS・JEMTA日本救命協会の久我です。

前回投稿の
第7回日本蘇生科学シンポジウム(J-ReSS)
参加メモ2 [ALS]
http://jemta.org/index_140328.html
に続き、

トピックス:2015年ガイドライン作成での論点 [EIT]のメモです。

尚、以下は如是我聞の私のメモですので、信ぴょう性には欠けます。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
3.EIT   石見 拓(京都大学)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
・さきほど坂本先生は「BLS はまだここまで」と言われましたが、もうそこまでいってい
 るのかとかとその進捗に驚いている。
・EITは、まず2012年10月にミーティングがありました。
・まず例示の意味で、座長の方で2つのトピックを選んでディスカッションをしている。
 Cardiac Arrest CenterとHigh Fidelity(忠実度の高い) Training?についてレビューア
 が評価した。
・G2010と同様にsimulation studyのアウトカムをどう評価するのか、枠組みを議論した。
 クリニカルでないアウトカムの重みづけをどうするのかを議論した。
・すべてのワークシートがPICO形式。PICOの決め方についてかなり議論している。
・EITの10個のトピックス。
 心停止センター、High Fidelity Training、蘇生システム測定など、曖昧な項目が多い
・10個のトピックスを具体的にどう決めるか? web上でタスクフォースのメンバーが投票
 し点数をつけて選ぶ。前回G2010の時はEITは30数個のトピックスが割り当てられている。
 今回もまず前回のトピックスの中から点数づけをした。34点をとった心停止センターが
 1番、High Fidelityが33点という形で10個が選ばれて、それぞれに担当のレビューアー
 が決められた。
・続けて2013年の4月にメルボルンで2回目のミィーティングがあった。ここでEIT に限ら
 ず全体のスケージュールの説明があった。昔からおられるモーンゴメリー(Montgomery?)
 先生が司会をされ、これまでの経過を説明され、今度は 7月のカナダであると説明され
 た。先ほど坂本先生が言われたように、少なくともカナダまでに、それぞれのグループ
 で、「10個のPICOを完成させる、レビューを一通り終わらせる」と言われていたと思う。
 次の20個のPICOもカナダまでには決めると言われていた。
・しかし、これは国際コンセンサスであるのに、我々がFly Meeting(急ぎ?/同時処理?の
 会議、立ち話的な情報交換?)(フライ会議)を実際行ったのは、2回しかないし、今度の
 カナダが3回目という状況で、今後の1年で会議が全くなくて、ほとんどの参加者はこ
 れで大丈夫かなと内心思っているのではないか。
・EITはこの1年間で、具体的な進捗が少なく、実際あまり進んでいない状況。
 10個のトピックは決まっているが残りの20個はほぼ議論が進んでいないのがEIT の現状
・ただ会うと色んな議論ができる。メルボルンでは、2つ目のトピックス:High Fidelity
 について議論ができた。そもそもこのHigh Fidelity という定義が何なのか?レビュー
 するには定義が大事。EIT のトピックスはほとんど、その定義づけが明確でないので、
 そもそも比較をするのが困難。アウトカムの評価が難しい。あとでグレーディングの説
 明があるかもしれないが、複数のアウトカムを同時に評価するので、アウトカムの重み
 づけが重要。EIT の場合はクリティカルなアウトカム(臨床転帰?)とシミュレーション
 でのアウトカムの重みづけが難しい。
・私が拙い英語で主張したのは「patient(患者)?のアウトカムとシミュレーションのアウ
 トカムのレベルを最初に一緒にしたらいいんじゃないか」との議論はよくないのではな
 いかという点。いくらEIT であってもクリティカルなアウトカムにより重きを置かない
 と、真実に近づかないんじゃないかとの議論をしている。その意味で、具体的な所に入
 る前の“プロセスの議論”が中心になっている。
・個人的な提案になるが、次の具体的なPICOを日本の皆さんにも相談していきたい。
 例えばEIT の中では、心肺蘇生をしてくれる人を増やすために、「市民に対しては少な
 くとも胸骨圧迫のみの心肺蘇生を活用していく」と日本版ガイドラインには書いてある。
 コミュニティに対する心肺蘇生の普及の方策に関しては、他のガイドラインではあまり
 言及されていないので、このような日本の進んだ所を伝えていって、次のコンセンサス
 作りを議論する必要がある。コミュニティーのCPR トレーニングの戦略。
・これはEIT のグループの中で紹介してみたが、まだまだトピックスとして取り上げても
 らえるかはわからないが、先ほどのBLS の中では胸骨圧迫のみの心肺蘇生と、人工呼吸
 付きがトップトピックスになっているとの紹介があった。BLS の心肺蘇生の手技として
 の比較ではなく、CPR トレーニングの戦略としての胸骨圧迫のみの心肺蘇生と、人工呼
 吸付きをどう位置づけるのか、EIT 特有の普及戦略としてトピックに入れるべきではな
 いかとの提案をしている。
・コミュニティの中でのアウトカムを最小にして、インターベンションをどうするかとい
 う話。具体的には、坂本班でついこのあいだ報告したもので、我々のグループで担当し
 たものがある。心肺蘇生をどこまで教えるか、ターゲットをはっきりしていない中で、
 このグループでは、「人口の16% で何かをすると物事がブレークスルーする」というこ
 とがあるので、短期間で地域の人口の16% 心肺蘇生を教えたらどうなるかという評価を
 している。
・この灰色の部分が従来の教え方。(この地域は従来の教え方でも他の地域より倍くらい
 教えている)それに上乗せする形で胸骨圧迫のみの心肺蘇生を短期間に教えていって、
 4年くらいかけて人口の16% に教えていったらどうなったかというと、バイスタンダー
 CPR の割合は変わらなかったが、実施者の中で良質なCPR が増えたという結果になった。
 これはついこの前、単純な結果をまとめただけなので、論文にして、EIT の重要なトピ
 ックとして取り上げていきたいと個人的に思っている。
・さらに提案したいこととしては、日本は世界で一番AED が普及していて、その結果、
 AED を使う上での課題が明らかになってきている。これは埼玉の小学生で、AED があっ
 た学校で心停止になったが現場にいた人が心停止と認識できずにAED が使われず、救命
 できなかった事例。こういう経験も恐らく日本が一番していると思う。
・そもそも救助者の心停止の認識がどうなのか。心停止を認識したら心肺蘇生を始めて
 AED を使うというプロセスではいけないのではないかという議論がある。こういうこと
 が課題であるとのコンセンサスが欲しい。日本の中で得られたものを積極的に提案して
 いきたい。いずれにしても心停止の認識について議論していく必要がある。
・このような国際コンセンサスだけではなく、特に教育普及の分野では、倫理的な国内特
 有な問題もある。具体的には、特に終末期関連で、前回2010年ガイドラインの中では、
 「わが国においては、救急蘇生の根本事項である蘇生の適用中止に関する国民的なコン
 センサスは存在しない」と書かれている。実は表に出る前にEIT のグループの中で膨大
 なレポートをまとめたが、これは重い課題であるし、全体としてのコンセンサスが得ら
 れないとガイドラインには載せられないだろうとのことで、大幅にカットされた。EIT
 グループの中では、今の段階では時期尚早だが、次回までにはしっかりとした国民的な
 議論をして充実させていきたいとの議論があった。これは全体に共有するが、もう2014
 年なので、急いで2015年のことを検討するチームを国内に立ち上げていきたい。チーム
 EIT として頑張りたいので皆さんぜひよろしくお願いします。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ACSについては、このあとの記事で投稿する予定です。

第7回日本蘇生科学シンポジウム(J-ReSS)参加メモ4 [ACS]
http://jemta.org/index_140410.html

posted by jemta at 17:37| 日記

2014年03月28日

第7回日本蘇生科学シンポジウム(J-ReSS)参加メモ2 [ALS]



本記事のURL
http://jemta.org/index_140328.html
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
こんにちは。
AHA岡山BLS・JEMTA日本救命協会の久我です。

前回投稿の
第7回日本蘇生科学シンポジウム(J-ReSS)参加メモ1 [BLS]
http://jemta.org/index_140327.html
に続き、

トピックス:2015年ガイドライン作成での論点 [ALS]のメモです。

尚、以下は如是我聞の私のメモですので、信ぴょう性には欠けます。
(このALSの発表はプログラム上では2番目なので、本メモでも2番目に挙げましたが、
 当日は順序が変更され、ACS、小児、新生児の後で、トピックスの最後でした。)

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
2.ALS   相引眞幸(愛媛大学)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
・さきほどの新生児の分野では、内容はできるだけ伏せるようにとのことだったが、ALS
 はそれほど厳格ではない。
・ILCORは1992年に心肺蘇生科学のFirstMeetingがあった。(AHA,ERC,HSFC,ARC,RCSA)
・JRCは1999/7/16に第1回の日本救急医療財団心肺蘇生法委員会が行われた。
 当時は旧厚生省も比較的協力的だったが途中で梯子を外されたという話も聞いている。
 結論としては、JRCは他の組織から独立して日本の代表者をILCORに派遣すべきとなった。
 2000年のILCORの会議に岡田会長がオブザーバーとして参加されたがILCORの会員となる
 にはJRCではダメだとのことで、RCAを立ち上げられた。
 2005年に日本、韓国、台湾、シンガポールの4か国で立ち上がった。
・RCAのILCORの正式加盟により、COSTORの内容を事前に知ることができるようになった。
 これは岡田先生のご尽力の賜物。又RCAの調印式では野口先生のご尽力があったと聞く。
 2010年のガイドラインはRCAの一員であるJRCが、独立に作ったという点で意義がある。
 今はRCAには、フィリピン、タイも入り、組織が大きくなった。
・ICLORのホームページ http://www.ilcor.org/ にはRCAも出ている。
 先ほどの新田先生の話にもあったが、(救命の連鎖において)小児と成人を一つにして、
 最初の任務を「心停止の予防」にしたことは、RCAの中では色んな議論があったが、
 JRCとしては誇るべきことであろう。プレホスピタルケアを含め、これはきわめて重要。
・来年の10月11月にはガイドラインを作らなくてはいけない。間に合うのかという感じ。
・昨年の4月にメルボルンで一般会議があった。今年は4月末から5月の初めまである。
・ALSはBLSより少し進んでいる感じ。インクルージョン(包摂)エクスクルージョン(排除)
 は終わって、そのまま行こうという感じ。
 Included Articleのアイエスアセスメントに入っている。
・私の担当は、ECPRとマニュアルCPRの比較。このPICOは坂本先生のグループで作成。
・J-PULSE-HYPO(心停止後に低体温32〜34℃療法を施行された患者の予後の追跡登録研究)
 が、resuscitation誌にアクセプトされた。これは必ずはいると思う。
 (注意:以下のリンクは本発言の論文か否か不明です。参考用)
 http://circ.ahajournals.org/cgi/content/meeting_abstract/122/21_MeetingAbstracts/A13937
・当初はIABP(補助循環装置)?の項目もあったが、IABPだけものが少なく、外している。
 今回は、ECPR vs マニュアルCPRということ。
・PICOで、問題は、Pending Search Strategy Developmentがまだ最初だということ。
・Morrison?のグループのバソプレッシンはPending COSTOR。
 draft developmentで一番進んでいる。
・我々と台湾のワンさんと一緒のものは、今はPending、full evidence reviewで評価中
・shockの領域でも、Lipid Therapyが非常に新しいトピックとしてでてきている。
・現在28個のPICOがある。それぞれに2-3人のタスクフォースが割り当てられ、評価中。
・来年の2月にダラスで、international consensus conferenceがある。
・2015年の10月11月にCOSTORが発行される。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

EITについては、このあとの記事で投稿する予定です。

第7回日本蘇生科学シンポジウム(J-ReSS)参加メモ3 [EIT]
http://jemta.org/index_140404.html


posted by jemta at 16:42| 日記

2014年03月27日

第7回日本蘇生科学シンポジウム(J-ReSS)参加メモ1 [BLS]



本記事のURL
http://jemta.org/index_140327.html
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
こんにちは。
AHA岡山BLS・JEMTA日本救命協会の久我です。

3月1日は、非常に久しぶりに関西に行きました。関西は昔、ドクターコースの学生の時
に、共同研究で、立命館大学と奈良医科大学に何回か伺ったことがあります。立命館大学
には、(昔の私のメインの研究テーマでお世話になった放医研のがん治療用の重粒子加速
器HIMAC の施設より規模が小さいのですが)中規模のイオン加速器があり実験させていた
だいたことがあります。
また共同研究で、奈良医大で、カテーテル使用のがん治療用小型放射線線源の空間強度の
分布測定のお手伝いに行き、奈良医大の地下の研究室で徹夜して実験したことを覚えてい
ます。
関西は中国地方の隣にもかかわらず、上記くらいの頻度しか伺った経験がありません。

今回は第7回日本蘇生科学シンポジウム(J-ReSS )のために京都の国際会館に日帰りました。
朝は5時半に家を出て往きは新幹線を使い、帰りは18切符でゆっくり十分な読書の時間
がとれました。

 第7回日本蘇生科学シンポジウム(J-ReSS)
 日   時: 2014年3月1日(土)9:00〜17:30
 場   所: 国立京都国際会館 Room B-1
 会   長: 氏家 良人(岡山大学救急医学)
 実行委員長: 野々木 宏(静岡県立総合病院)
 参 加 費: 2,000円
 プログラム/ポスター/一般演題抄録
 http://jrc.umin.ac.jp/pdf/20140110_Program.pdf
 http://jrc.umin.ac.jp/pdf/20140130_LASTposter.pdf
 http://jrc.umin.ac.jp/pdf/7th_J-ReSS_poster.pdf

場所は京都から地下鉄で20分の所で、会場では日本集中治療医学会がメインに行われて
おり、20くらいあった学会受付デスクの一番奥にJ-ReSSの受付デスクが一つありました。
2010年11月に、私はAHA のガイドライン2010の発表後に行われた、シカゴでの
American Heart Association Scientific Sessions Conference 2010
http://jemta.org/index_101114.html
に参加したのですが、AHA のRessに比べ今回のJ-Ressはその規模が2桁くらい小さいよう
に感じられました。とはいえ、JRC の岡田先生をはじめ、日本の主要な蘇生科学に関する
方々が参加されており、非常に勉強になりました。AHA のRessはインスト会議と1日の学
会参加込みで2万円くらいの参加費を払いましたが、J-Ressの参加費はその1/10でした。

京都国際会館の会場費やプロジェクター使用料で30万円以上かかっていると思いますが、
70ページもあるAHA ReSS Report 2012の冊子配布やお弁当の配布もあったので、当日の参
加者の参加料だけで負担できるものではないように感じました。
会場は160席くらいが用意されており、立ち見はなかったように思いますが、時間帯に
よっては、かなり多くの方が熱心に参加されていました。本シンポジウムの実行委員は、
日本集中医療学会とNPO救命おかやまの2団体ですが、玄関の受付には NPO救命おかやま
の屋敷さんがおられたのでちょっとびっくりしました。お忙しい中、朝早くから来られて
おられたのだと思います。またお弁当の配布も担当されておられました。スタッフの方々
は朝早くから、皆ボランティアで任務につかれておられると思いますが、陰で運営に携わ
るスタッフの方々のご尽力があって開催できる会合なので、この会に参加させていただき、
この場を借りて深くお礼申し上げます。誠にありがとうございました。

121214_bhf1.jpg


尚、以下は如是我聞の私のメモですので、信ぴょう性には欠けます。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
トピックス:2015年ガイドライン作成での論点
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
1.BLS   坂本哲也(帝京大学)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
・我が国のJRCガイドライン2015をどうするかはまだ議論がされていない。
・現在、ILCORでは2015版が議論されている。
・ILCOR2010のホームページでは、ERCとAHAと並びJRCのガイドライン(英語)が掲載された
・2015年のプロセス: RCAの一員として日本から全てのタスクフォースにメンバーが出席
・各タスクフォースに RCAから2名参加。うち1名は日本から、もう一人はシンガポール、
 韓国、台湾の各メンバー国から。(坂本先生は)BLSタスクフォースとして参加している。
・2014年10月ウィーンでのミーティングが今回のキックオフ。
・このミーティングで決まったことは、今までのようなface-to-faceの会議の形態でなく、
 SharePoint
 http://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/0404/15/news100_2.html
 を使い、オンラインでドキュメント管理をすることが決定された。
 このシステムを通してエビデンスの評価を行い、CoSTRを作成する。
・もう一つの決定事項は、2015年にまとめて全部評価をするのではなく、2010年をスター
 トとして、順次必要な評価を終了させていくことになった。
・現在扱っているトピックに加えて、重要なトピックは継続的に更新していく。
 (アイコスター iCoSTR)
・2010CoSTRでは、29カ国366人のWorkSheet Authorにより277のトピックが検討された。
 トピックが多すぎたために重要なものとそうでないもの時間の振り分けが不十分だった。
・2015CoSTRでは、トピックの数を制限する方針。
・GRADEシステムを取り入れて、より客観的な評価を行う。
・現在いくつかのPICO(Population, Intervention, Comparison, Outcome)を立て検討中
 http://spell.umin.jp/EBM.htm
 その大半は2010CoSTRの中でknowledge gap(知識格差)として示されていたもの。これら
 について新たなエビデンスの評価がされている。
・BLSタスクフォースでは重要な10個のトピックが2013年4月にメルボルンで検討された。
 例えば、優先順位の高いものから
 「胸骨圧迫のみのCPRと標準CPRはどちらが有効か(市民の場合/救急隊の場合)」
 「胸骨圧迫の深さ」
 「口頭指導」
 「様々なリアルタイムフィードバック機器」
 「PADプログラムの有効性」
 「胸骨圧迫中の波形解析(圧迫の中止をしないで波形解析)」
 「30:2と2:30(最初の2回の人工呼吸は必要か)」
 「CPRによる合併症の問題」
 というふうふうに優先順位を決めた。
・タスクフォースのメンバーはSharePointにログインをして、自分のタスクをこなす。
・現在BLSでは36のPICOが候補としてあがっている。例えば診断に関しては、通信司令員
 がどのようにして心停止を認識するかを初めとして4つ、そしてインタベーションとし
 て合計で32個挙げられている。現在この中のトップ10を決めて、その次に検討すべき
 11位から20位について、担当を誰にするかを検討している。
・現在(坂本先生が)担当している「胸骨圧迫の中断を如何に短くするか」のテーマは、
 もう一人のタスクフォースのメンバーであるコスター先生と2人で担当している。
・BLSの36個のPICOについての進捗ステータスは、PICOを立てるところから始まって、最
 後のFull Evidence Reviewまで。最後まで完了しているのは現在2個だけ。
 2015の発表は来年の今頃には概ね完成していなければならないが今後1年の作業が膨大
・次回の会議は4月の終わりから5月にかけてカナダのバンフで開催される。
・BLSの詳細については守秘義務があり、詳細な話はできない。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ALSについては、このあとの記事で投稿する予定です。

第7回日本蘇生科学シンポジウム(J-ReSS)参加メモ2 [ALS]
http://jemta.org/index_140328.html


posted by jemta at 17:25| 日記

2013年06月19日

G2010-BLSヘルスケアプロバイダーの呼吸の確認の時間は5秒以上10秒以内?(その2)



本記事のURL
http://jemta.org/index_130619.html
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
こんばんは。
AHA岡山BLS・JEMTA日本救命協会の久我です。

前回の記事
http://jemta.org/index_130615.html
の続きです。


■English to English Translation、文化の翻訳の必要性
私が大学院のD1の学生の時、たまたまですけれども、幸運にも、科研費をもらってヨーロ
ッパのある国立研究所に半年間、共同研究のために行っていたことがありました。研究所
では日本人は私一人でしたが、各国からはグループで来られていました。共同実験の全体
ミーティングの時に困ったことがありました。ロシア人、現地の人、中国人の英語はそれ
ぞれなまりがあるのですが、自分が英語に堪能でないことは皆わかっていますし、身振り
手振りも使うので、英語を第二外国語とする人たちの間では、だいたい意思は通じます。
しかし、アメリカ人がしゃべると皆よく意味がわからないのです。そこで、アメリカに長
期留学経験がありアメリカの文化をよく知っている中国の研究者が、そのアメリカ人の英
語を聞いて、それをその中国の研究者の言葉で英語で話すと、皆よくわかりました。彼は
「これは、English to English Translation」だと言っていました。アメリカ人も彼がど
んな単語を使って話をしているのかわかるはずなのですが、初めから自分で皆にわかる英
語を話すことはできないようで、結局ずっと、彼に翻訳を頼んでいました。背景にある文
化を理解して翻訳しないと通じないものだと感じました。

AHAはガイドライン2010の発表と同時に、各国の言語でガイドライン2010のハイライトも
発表しました。AHAは、はじめから自国のガイドラインが各国で使われることを意識して
おり、これは非常に画期的であったと思います。ただこれは言葉だけを翻訳したものとい
う点は否めないと思いました。一例をあげると、『心臓発作時には成人用アスピリン1錠
か、小児用アスピリンを2錠噛め』という勧告がありました。この文章には、有効成分の
含有量が書かれていませんが、アメリカではこれで十分通用します。アメリカの薬局にあ
るアスピリンはほとんどが赤い心臓のマークのついた抗血小板作用のもので成人用325mg
小児用81mgです。しかし製造元のバイエル社のそれは、本来は鎮痛薬で世界中での標準は
500mg です。アメリカにも500mg のものも売ってはいるのですが、少数です。一方、例え
ば、日本の薬局では、抗血小板作用としての製品は販売されておらず、鎮痛薬としてのア
スピリン500mg しか売っていませんから、このガイドラインの表現では不十分で、各国の
状況を鑑みて、もとの文章を各国で間違えることがないような正確な表現を期待したいと
ころです。


■HCPの呼吸の確認は5秒以上10秒以内?(その2)
前置きが長くなりましたが、AHA の意図を理解するのは、アメリカ人の考え方というか、
日本人とは文化の発想が違う人が書いたという視点から見ることが必要だと思い、前回の
粗い投稿をもう少し、書いてみようと思います。

HCPの呼吸の確認の動作の目標値となる文章は、
マニュアルP27の
========================================
反応の有無と、呼吸をしてないか、
正常な呼吸がなく死線期呼吸のみであるかをチェックする(5秒以上10秒以内)
========================================
です。

この文章の解釈ですが、カッコ内の(5秒以上10秒以内)が、
(A案)反応の確認と呼吸の確認の全体にかかっている−−−のか、それとも
(B案)呼吸の確認にかかっている−−−のか
の二つの案が考えられます。A案、B案以外は考えられません。


■(A案)の場合
・A案は、反応の確認と呼吸の確認の合計を、(5秒以上10秒以内)と捉えます。
・A案は、反応の確認にも時間がかかるので、その時間も考慮するという考え方です。
・反応の確認の時間を計測するのであれば、出動要請もカウントする必要があります。
・しかし、A案では、P28の『現場到着後10秒以内に反応の確認と呼吸の確認および
 出動要請を完了する必要がある(要旨)』という条件を満たすことができません。
・無理やり満たそうとすると、
 反応の確認の時間は計測するけれども、
 出動要請の時間は、ゼロとして計測しない・・・
 というふうになり、解釈に一環性がありません。

■(B案)の場合
・B案は、反応の確認はすぐにできるからゼロとして計測しないというスタンスです。
・呼吸の確認の時間を(5秒以上10秒以内)とするというものです。
・B案の考え方は、1秒、2秒は誤差の内だから、短い時間のものは無視する考えです。
・そうすると当然、出動要請もすぐにできるから、ゼロとするということになります。
・この考え方だと、P28の『現場到着後10秒以内に反応の確認と呼吸の確認および出
 動要請を完了する必要がある(要旨)』という条件は自然に満たされます。
・解釈はシンプルで、一貫性があります。


■アメリカのインストラクターは(A案)/(B案)のどちらで解釈しているか?
日本人から見ると、AHAのマニュアルのP27/P28の表現には曖昧さがあるように
見えます。文化の違いから、日本人の解釈は意見がわかれると思います。しかしAHAの
お膝元のアメリカ人のインストラクターは、同じ国民なので、AHAの意図とアメリカ人
インストラクターの解釈とは自然と一致しているのではないかと考え、少し調べてみまし
た。ネット上の発言は、匿名のものより、実名でのサイトの情報の方が信憑性があります。
(おかしなことをしているサイトはAHAにより、閉鎖させられますので)
そこで、匿名の発言ではなく、実名での発言、実名のサイトを調べました。

調べた結果、(A案)の解釈をしている例は、見つけることができませんでした。

次に、(B案)の解釈の例ですが、
例えば、以下のサイトでは、[About Us]の下の右の画面の
BLS Study Guide & Checklistsの欄にあるPDFファイルで、
以下のように(B案)の解釈で書かれていました。
========================================
Performance CPR (Virginia州Richmond市のAHAトレーニングサイト)
 http://www.performancecprtraining.com/

 BLS Course Study Guide & ReviewのPDF資料(3/14)

CPR ‐ Adult
1. Adult 1 rescuer CPR
・Determine Unresponsiveness (shake and shout), if no response
・Check for no breathing or normal breathing (minimum 5 seconds; maximum 10 seconds)
・Activate emergency medical system and call for an AED
・Check for carotid pulse for (minimum 5 seconds; maximum 10 seconds)

http://www.performancecprtraining.com/wp-content/uploads/2013/01/aha_bls_review.pdf
========================================
(上記を訳すると以下のようになります)
成人のCPR
1.成人の一人法CPR
・反応の確認(叩いて、声をかける)。もし、反応がなければ
・呼吸していないか、或いは、通常の呼吸をしているかを確認(5秒以上10秒以内)
・緊急通報を依頼し、AEDを持ってくるよう依頼する。
・頚動脈を確認(5秒以上10秒以内)
========================================


■日本人の感覚とアメリカ人の感覚の違い
また古いエピソードになりますが、、2009年7月に、千代田区で、ある学会が開催さ
れ、そのなかで、AHAの研修会も開かれました。私もその1室にお邪魔していたのです
が、日本人の講師の方がHCPの呼吸の確認のスキルチェックの説明の際に、ストップウ
オッチを使ってチェックするように言われました。インストマニュアルには「5秒以上1
0秒以内」と書かれているので、時間をきっちりはかって、それを受講生にフィードバッ
クすると考えるのは、日本人的なセンスからすると当然かもしれません。
しかし、AHAにはそういう意図はないため、私も黙っているわけにもいかず、その講師
の方に、「マニュアルには、胸骨圧迫の18秒をストップウォッチで測れと書かれていま
すが、呼吸の確認をストップウォッチで測れとは書かれていません。」と申し上げた所、
講師の方は、「えっ?」というリアクションで、全く意外!といった表情をされたことを
覚えています。

天文学は、1=10=100の世界です。取り扱っているオーダーが大きいので、桁が1
桁、2桁違ってもそれは誤差の範囲内です。
AHAの呼吸の確認のスキルチェックでは、時間計測は、ストップウォッチではなく、腹
時計でいいことになっています。1秒、2秒は誤差の範囲内です。ストップウォッチで測
っても、頭で数えても誤差の範囲内で測れるというスタンスです。

ですので、呼吸の確認の時間や出動要請にかかる時間を、
(すぐにできるので)「ゼロと見なす」としても、不思議ではないと思います。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


posted by jemta at 23:16| 日記