2014年05月03日

林寛之先生の「アナフィラキシーショック」講義のメモ



本記事のURL
http://jemta.org/index_140503.html
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こんにちは。
AHA岡山BLS・JEMTA日本救命協会の久我です。

■1.初めに
2012年12月20日に東京都調布市立富士見台小学校で、食物アレルギーを持つ5年生の女児
Sさんが、給食の配膳後に担任から「食べる人いない?」と案内されたおかわりのチヂミ
を、チーズ入りとは知らずに誤って食べて、アナフィラキーショックをおこし、本人が、
「先生、気持ちが悪い」と訴えた14分後に、校長がエピペンを打ちましたが、結局、搬
送先の病院で亡くなるという事故がありました。未来のあるちいさなお子さんが亡くなっ
たことを知った時は何故そのなったのかと非常にショックを受けたことを覚えています。
http://www.city.chofu.tokyo.jp/www/contents/1363069358235/

これまで、このヘルスケア通信でも、エピペンに関わる記事を投稿してきました。
・文科省、児童らへのアレルギー対応ガイドライン(教職員のエピペン使用)公表
  http://jemta.org/index_080426.html
・仮説:エピペンをズボンの上から打つ時はポケットの中身をだしてから
  http://jemta.org/index_100312.html
・『給食でのアレルギー事故から どう守る』 米国での誤食防止・エピペン最新事情
  http://jemta.org/index_130603.html

アメリカでは労働省のOSHAが一定規模以上の企業には一定の安全管理担当者を置き、担当
者にAHAのファーストエイド講習を受けることを義務付けており、ファーストエイドコース
の中でエピペンの使用を含むアレルギーの応急対応もできるように、制度化されています。
ファーストエイドコースでは講義とエピペントレーナーを使った実技訓練をしています。
日本では本人が打てない時に、処方された本人や家族以外にも、学校や幼稚園の職員が代
わって打つことは、反復継続の意思がないことから、医師法には反しないとの解釈が出さ
れ、エピペンの研修を受け、訓練されている職員もおられます。救急救命士も救急救命処
置範囲の改正により、処方された本人に代わって打つことができるようになっています。
尚、処方する側の医師は PfizerPROのHPなどから、エピペン処方の講習と登録をすれば処
方できます。歯科医の先生方は患者さんに処方することはできませんが、同様の講習と登
録をすれば、クリニックにエピペンを常備でき、局所麻酔時のアナフィラキーショック等
に対応できます。
米国のファーストエイドでは、医療機器や薬は使わないことが前提ですがAED とエピペン
とアスピリン(急性冠症候群(ACS)時)の3つだけは別です。BLSやACLSだけでは緊急時に人
を救うことができません。心停止になる前のファーストエイド(応急手当)が必要です。
(AHA ファーストエイドコース http://jemta.org/fa.html

厚労省の人口動態統計によると日本のアナフィラキシーによる1年あたりの平均死亡者は
薬物=27人/年、蜂毒=17人、食物=5人、血清=0.5人、不明=10人(平成18〜23年)であり、
薬物によるものが最も多いです。死亡せずに治癒した人は、年間5000〜6000人です。
又、アレルゲンによる心停止までの平均時間(中央値)は、
薬物=5分、蜂毒=15分、食物=30分となっています。
緊急時に落ち着いて対処するには、事前に、アナフィラキシーのことをよく理解しておく
ことが必要です。


■2.林寛之先生の「アナフィラキシーショック」講義のメモ
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CareNet>連載企画>CareneTVチャンネル>名作チャンネル(無料視聴)
 Dr.林の笑劇的救急問答 [Season1]
 第3回 落としアナいっぱい!アナフィラキシーショック
 http://www.carenet.com/report/carenetvch/carenetv_ch2.html
 (視聴するには、無料の会員登録が必要です。)

本投稿は、福井県立病院 救命救急センター 林寛之先生の講義(研修医向け)のメモです
[☆尚、本メモは一部加筆しています。]
尚、林先生のDVDは購入も可能。(今回の分は救急問答7<上巻>にも収録されています)
https://www.carenet.com/fullsearch?type=dvd&sort=f&bt=&kw=Dr.%E6%9E%97
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■アナフィラキシーの語源
ギリシャ語のana(反対 against)+phylax(保護 protect)
体の免疫状態が保護できない状態にある。

Anaphylaxy vs Anaphylactoid reaction
アナフィラキシーと類アナフィラキシー反応

アナフィラキシー:
抗原と肥満細胞固定抗体が主にIgEと結合して開始される。
IgEを介して、IgEにくっついて、肥満細胞から、Histamine(ヒスタミン),ECF-A,HMW-NCF,
tryptase,kallikrein,PAF,arachidonic acid metabolites,prostaglandin D2,adenosine
などが出る。

[☆加筆]
■肥満細胞:
肥満細胞(ひまんさいぼう)は哺乳類の粘膜下組織や結合組織等に存在する造血幹細胞由来
の細胞。ランゲルハンス細胞と共に炎症や免疫反応などの生体防御機構に重要な役割を持
つ。この肥満という名称は、“肥満”とは関係が無く、膨れた様が肥満を想起させるので
つけられた。顆粒細胞(mast cell:マスト細胞)とも呼ばれる。
[☆]

Anaphylactoid reaction:
IgEを介さずに開始される反応
IgEを介さずに直接、肥満細胞(粘膜下組織や結合組織等に存在する造血幹細胞由来の細胞)
や好塩基球(白血球の一種。血液中に極少量含まれている。大型の顆粒をもつもの)
Anaphylactoid reactionで有名なものは、造影剤によるショック。

■アナフィラキシーの原因
・食べ物、ピーナッツ、魚介類、卵、果物、穀類、そば
・蜂、蛇、蟻(あり)などの毒
・薬剤、ペニシリン、NSAIDs、抗癌剤、プロタミン、局所麻酔
・環境因子:ハウスダスト、花粉
・まむし抗毒素
・ラテックス
・その他:寒冷、温熱、光

■類アナフィラキシー反応の原因
・薬剤:麻薬、アリチル酸、NSAIDs
・放射線検査用造影剤
・プロタミン
・運動

Rusznak C, et al,Anaphylaxis and anaphyiactoid reactions.
Postgraduate Med 2002,111(5) 101-114
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12040857

日本はピーナッツアレルギーは少ない。外国の場合は、小さい時からピーナッツバターを
塗って使っているので多い。日本はそばアレルギーは結構多い。修学旅行で信州に行って
蕎麦屋の前でふーっと倒れる例もある。じゃがいもみたいに顔が腫れあがって、毛穴がぶ
つぶつと引っ込んでしまう腫れ方をする例など。医療従事者はスタンダードプリコーショ
ンで手袋をしているので、ラテックスアレルギーが増えている。アナフィラキシーと
類アナフィラキシー反応は治療は同じ。

[☆加筆 ■ヒスタミン(C5H9N3):]
普段は細胞内の顆粒に貯蔵されており、細胞表面の抗体に抗原が結合すると細胞外に放出
される。血圧降下、血管透過性亢進、平滑筋収縮、血管拡張、腺分泌促進などの薬理作用
があり、アレルギー反応や炎症の発現に介在物質として働く。
[☆]

ヒスタミンの受容体(受容体は3つある)
・H1 血管透過性↑、平滑筋収縮、PG↑
・H2 血管透過性↑、胃酸分泌↑、ヒスタミン分泌↑、サプレッサーリンパ球刺激
・H3 中枢神経、末梢神経伝達物質抑制、ヒスタミン遊離抑制
普段使う抗ヒスタミン剤はH1ブロッカー、胃潰瘍に使うのはH2ブロッカー、抗ヒスタミン
剤を飲むとと眠くなるのはH3の作用。


■アナフィラキシーでどうして死ぬのか?
救急のABC
・喉頭浮腫 Airway (気道がふさがる
・呼吸不全 Breathing (喘息、換気ができない
・ショック shoCk   (血管が拡がって、水が血管から出てて行く。distributive shock
           血液分布異常性ショック。循環が悪くなる)
上記の3つで死ぬ。ということは、「先生、すいません。蕁麻疹です」と言ってきた場合
に、じんましんの治療だけするのではダメで、皮膚の血管だけではなく、中の血管も腫れ
ているのかどうかを調べるのが大事。喉の血管が腫れてつまらないか、肺の血管が腫れあ
がって気管の浮腫ができて息ができなくならないか、全身の血管が拡がってショックにな
らないか。

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[☆加筆 喉頭浮腫]
[咽頭(いんとう)上咽頭 鼻の奥でのどの上。口から直接見えない
[       中咽頭 口をあけた時に見える場所。扁桃腺、のどちんこの向こうが後壁
[       下咽頭 口から直接見えない。のど仏の後ろ側。食堂入口。

[喉頭(こうとう)咽頭と気管の間の部分
[       咽喉から気管に至る部分。中ほどに声帯がある。
http://www.raijin.com/kenko-tsushin/kenko00170jp1.html

[喉頭浮腫(こうとうふしゅ)
[「喉頭浮腫」は、いわゆる「のどぼとけ」に相当する部位にあたる喉頭の内部の粘膜がはれ
[       呼吸が障害される病態であり、医薬品によって引き起こされることがあり
[       ます。喉頭浮腫は咽頭炎や扁桃腺炎など、のどの炎症に続発しやすく、こ
[       れらの症状を併せ持ちます。
[咽頭と喉頭は、上気道に属します。

[PALSコースで、息を吸うとき(吸気)に喘鳴(ぜいめい)が聞こえるのは、鼻から上気道まで
[の間に狭窄部位があるため、息を吐くとき(呼気)に喘鳴(ぜいめい)が聞こえるのは
[下気道の圧迫や狭窄があるためと習うと思います。その理由は、吸気では、上気道内が陰
[圧になるので狭窄するが、下気道は胸腔内圧が陰圧のため広がる。呼気ではその逆で、上
[気道内は陽圧になるので広がるが、下気道は肺の弾性力によって狭窄するためです。
http://med.atsuhiro-me.net/2013/06/blog-post_16.html
[林先生は、CASETの寸劇で、
[A初めに、患者さんに息がつらくないかを聞かれた後、口の中(口蓋垂? )をペンライト
[ をあてて、息を吸わせて、診ておられました。
[B次に聴診器を胸にあてて、患者さんに大きく息を吸ってフーッと大きく息を吐かせて
[ 胸の音を聞いておられました。(左胸と左胸の2回)もし下気道(肺の気管支)が狭窄
[ していれば、吐くときに異常音が聞こえるはずだと思います。
[Dその次にお腹がいたくないか/下痢をしていないと症状を聞かれていました。
[C次に看護師さんに血圧を聞いて、再度測るよう指示しておられました。
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■喉頭浮腫はどうやって診るか?(喉頭浮腫の臨床所見)
くちびるがタラコになっているか否かはあまり関係ない。
・後咽頭浮腫(口をア〜ンと開けてと言った時に喉の奥が腫れていないか)
・口蓋垂浮腫(のどちんこが腫れていないかどうか)
・のどの締め付け感
・嗄声(させい) (かれ声、しわがれ声)

■アナフィラキシーの治療
・エピネフリン
・輸液
・抗ヒスタミン H1 & H2
・ステロイド
   ハイドロコルチゾン 100〜500mg
   メチルプレドニゾロン 125〜250mg
   プレドニゾロン 1mg/kg

蕁麻疹の治療が圧倒的に頻度が多いので、蕁麻疹の治療に慣れていると、抗ヒスタミンや
ステロイドを使う、のんびとした治療に慣れている人が多い。しかし、目の前で死んでし
まうような人、例えばエアウェイがやられる人、ブリージングがやられる人、
サーキュレーションがやられる人は急激に悪くなる。やられてしまうのにかかる時間はど
れくらいか?。多くの場合アナフィラキシーで心肺停止に至るのは約30分〜1時間以内。
三重県の会社員が蜂に耳たぶを刺されて5分で心停止になった。血流がいいところは、要
注意。時間的に早い。診ているうちにあっという間に亡くなる。血管がワーッと拡がって
しまう。戦う一番大事なのはエピネフリン。血管が拡がってしまうdistributive shockで
あるから拡がるボリュームを戻してやる輸液が大切。エピネフリンと輸液はあわてないと
いけない。

■抗ヒスタミンはどれくらいで効いてくるか?
4時間くらいかかる。ステロイドも4時間くらいかかる。1時間から効いてくるが、
ピークは、4〜6時間。効いてくる時間を例えると、エピネフリンはジェット機、
抗ヒスタミン剤は自動車、ステロイドは人力車。

■何故エピネフリンはいいのか?
アドレナリン受容体(Adrenergic receptor )とは、アドレナリン、ノルアドレナリンを始
めとするカテコールアミン類によって活性化される Gタンパク共役型の受容体である。
主に心筋や平滑筋に存在し、脳や脂肪細胞にもある。

α1受容体:血管収縮、粘膜浮腫軽減
α2受容体:インスリン分泌低下、ノルエピネフリン分泌低下
β1受容体:心収縮力増強、脈拍増加
β2受容体:気管支拡張、脱顆粒抑制、血管拡張、糖新生

*脱顆粒……肥満細胞の中にはヒスタミンなどがあり、細胞表面のIgEに抗原が結合すると
その内容物であるヒスタミンなどが放出されること。
心収縮力増強、血管収縮、粘膜浮腫軽減は、皆さん頭に入っていると思うが、実は、肥満
細胞(マストセル)から脱顆粒を抑制する。根っこの部分で、ヒスタミンがでてくるのを抑
える。抗ヒスタミン剤というのはレセプタのレベルで今起こっている反応を抑えるが、基
の肥満細胞や好塩基球からヒスタミンが出るのを抑える薬がエピネフリン。

■エピネフリンが効かないのはどういう時か?
・エピネフリン投与が遅れた場合……呼吸症状やショックが悪くなるのを待ってはダメ
 (一番大事。ヒスタミンとステロイドで様子を見ようとしているとすぐに悪くなる。
  悪くなってからエピネフリンを打っても効かない。早いうちに使わないといけない)
・アナフィラキシーの進行が速すぎる場合……間に合わなかった!
・エピネフリンの投与量が不十分な場合……繰り返し必要な場合がある。
 (1回投与で良くなる思っていると大間違い。2回、3回と必要な場合もある。大体、
  2回くらい。)
・筋注ではなく皮下注した場合……吸収が遅くて間に合わない!
 (よく教科書にも皮下注と書いてあるが、皮下注は効果が遅い。皮下注は血管を収縮さ
  せるため、吸収が悪く、効果発現が遅くなる。)
・患者が立位の場合……立位では静脈還流が減る
 (これが本当かどうか、僕にはよくわからない。)
・薬剤が期限切れの場合……薬効の低下
 (一般の方が持ち歩くエピペンは1年ちょっとたつと期限切れになる。また、診療所に
  ストックしておいて期限切れになることもある。)
・β遮断薬(降圧薬/狭心症状予防薬)やα遮断薬(高血圧治療/排尿障害治療)、 ACE阻害薬
 を服用している場合。
 (一番上の投与が遅れた場合とこの場合は覚えて下さい。βブロッカー、αブロッカー
  ACE-inhibitor(心臓の収縮が落ちている)を飲んで場合は、やはり交感神経の
  カテコラミン系は効きにくい。その時にアナフィラキシーがどんどん悪くなってくる
  場合は、エピネフリンだけでは戦えないことがある。

■エピネフリン
・タイミングが命! 早期につかうべし 遅いのはダメ!
・◎筋注 0.3〜0.5mg 10〜20分後効果判定
  (僕は15分たったら待ちきれないので次を使ってしまう)
   必要なら繰り返す
・×皮下注はダメ。めちゃくちゃ遅い!
・△静注0.1mgずつ 心肺停止、重症ショックで難治になる例あり。
 (実は、静注するのは本当にヤバい時以外はやめといた方がいい。血圧はふれるという
  時に静注すると、ヒドイ目にあうことがある。エピネフリンを10倍にのばして、その
  1/10ずつ使う。結局0.1mgずつ使う。0.1mgちょっと静注して、効かないので、時間が
  たつのでもう効いているはずだと思ってもまだ効かない、血圧低いという時に、もう
  一回使おうと0.1mg追加して、合計で0.2mg使ったら、使った瞬間、血圧が急に200に
  なったり、脈拍が 200にあがったりすることがある。そのような経験がある。あと、
  基礎疾患にもよる。虚血性心疾患を持っている人の場合は、やはり静注はこわい。
  筋注は5分以内に効いてくるわけなので、筋注でいい。脈がふれる場合は筋注。静注
  はよほどの場合でないと、コントロールされた環境で使うべきだと思う。

■筋注は肩の筋肉がよいのか、大きい大腿(だいたい)の外側広筋(がいそくこうきん)がよ
いのか?
調べたスタディでは、外側広筋の方が吸収がよかった。日本の場合は、殿筋(でんきん:
お尻の筋肉) も使う。殿筋もでかい。でかい筋肉の方が吸収がいい。患者さんがズボンを
おろすのを嫌がった場合に肩に打つと吸収が遅い。筋肉がでかい方が血流がよいから吸収
が早いのを知ってた方がよい。お尻の筋注でズボンをガバッとおろす人がいるが、あまり
おろさなくても十分できる。
エピネフリンは、タイミングが命だというのは以下にあるのでぜひ読んでおいて下さい。
非常にいいレビュー
Adrenaline in the treatment of anaphylaxis: what is the evidence?
BMJ 2003 327 1332-1335
http://www.bmj.com/content/327/7427/1332

蜂さされの文献は以下にある。これもぜひ読んで下さい。
Freeman TM Hypersensitivity to hymenoptea strings
N Engl J Med 2004 351(19) 1979-84
http://navyemergencymedicine.com/wp-content/uploads/2010/01/Hymenoptera-stings.pdf

■Dr.林のアナフィラキシーのABCD
エピネフリンを早く使えというのは、一体どういう時か?

全身蕁麻疹+アナフィラキシーのABCD(以下のどれかがあれば…)
      A:Airway    喉頭浮腫
      B:Breathing  喘息
      C:Circulation ショック
      D:Diarrhea   下痢、腹痛

結局、アナフィラキシーの何を診たいのか? 全身の血管が腫れているかを診たい。死ぬ
のは、喉、肺、全身の血圧のC 、あとおなかの中の血管も腫れているかどうかを診るのも
大事。「おなかが痛い」とか、「下痢してきた」という場合は、実はただの蕁麻疹だけで
はなくて、おなかの中の血管も腫れているという事。この時は筋注の適用だと思った方が
いい。比較的早めに使う。本当に蕁麻疹だけでそれほどたいしたことはない場合は、
エピネフリンはいりません。上記の図でABCDにひっかかる、全身の蕁麻疹があった場合は、
エピネフリンを筋注でオーダーすることがすごく大事。なるべくでかい筋肉に0.3m筋注。

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[☆加筆 エピネフリン(エピペン)を打つタイミング]
[林先生は、全身蕁麻疹があり、かつ、ABCDのうちどれかの症状があればエピネフリンを
[打てと言われています。また、蕁麻疹だけの場合はエピネフリンは不要だと。

[■以下は、薬物によるアナフィラキシーショックの時系列の例です。
[【症例】20歳代女性
[     (出典: 厚労省H19重篤副作用疾患別対応マニュアル アナフィラキシーP26)
[             http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/12/dl/s1213-4h.pdf
[近医で気管支炎の診断にて抗菌薬、セフジトレン・ピボキシルが処方され(現在は
[カゼインを含有していない)、内服したところ20分後に全身蕁麻疹が出現しため受診。
[抗菌薬によるアナフィラキシーを考え、クロルフェニラミン(5 mg)の点滴を開始した。
[抗菌薬内服45分後に喘鳴が出現し、SpO2(room air)85%、収縮期血圧89 mmHgとなり
[アナフィラキシー・ショックの治療のため、直ちに酸素投与(マスク6L/分)、
[アドレナリン 0.3 mg筋注、生理食塩水500 mL(10分)と同時にメチルプレドニゾロン
[40 mgの点滴投与と塩酸プロカテロール 0.3 mgを吸入させた。内服55分後には、
[SpO2(マスク6 L/分)93%、血圧110 mmHgとなり、以後、乳酸リンゲル 500 mL/時間の
[持続点滴し、抗菌剤内服120分後には、蕁麻疹は消退傾向で、喘鳴は消失し、
[SpO2(鼻カテーテル2 L/分)98%、血圧120 mmHgまで改善し、内服180分後には、呼吸、
[循環状態は改善した。

140503_anaphylaxy.jpg


[この例で、抗菌薬によるアナフィラキシー症状は、まず蕁麻疹が先に表れています。
[次に、喘鳴が現れ、SPO2(血液中の酸素飽和度)と血圧が急に下がっています。この例で
[はアドレナリン(エピネフリン:エピペンと同じ)と輸液の治療介入により、その5分後
[くらいから、SPO2と血圧は改善し始めます。

[日本小児アレルギー学会の「一般向けエピペンの適用」では、
[ http://www.jspaci.jp/modules/membership/index.php?page=article&storyid=63
[「エピペンが処方されている患者でアナフィラキーショックを疑う場合、下記の症状が
[ 一つでもあれば使用すべきである」となっています。

[・消火器の症状D:繰り返し吐き続ける 持続する強い(がまんできない)おなかの痛み
[・呼吸器の症状A:喉や胸が締め付けられる 声がかすれる 犬が吠えるような咳
[       B 持続する強い咳込み ゼーゼーする呼吸 息がしにくい
[・全身の症状 C:唇や爪が青白い 脈を触れにくい・不規則
[         意識がもうろうとしている ぐったりしている 尿や便を漏らす

[上記のアレルギー学会の指針でも林先生の講義と同じで、蕁麻疹がでたら打てとは書い
[てありません。アレルギー学会と林先生の指針を比較すると、
[消火器の症状=D、呼吸器の症状=A/B、全身の症状=C に相当すると思います。もし、
[学会の指針の、「消化器の症状」の項目が一番下に書かれていれば、上からABCDの順に
[チェックできるので、そのように並び替えて覚えておいた方が覚えやすいかもしれませ
[ん。

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■救急の大原則
危ない薬は医師が自分で打つこと。(口頭指示で人に頼むのはダメ!)危ない薬は全部自
分でつめて自分で打つ。これはクセにして下さい。医療事故を防ぐためにも。すごく大事
な薬ですから口頭指示ではなく、自分で打つ。

■Monophasic(単相)? Biphasic(2相)? Protracted(長期化)?
・5〜20%は二峰性
・ステロイドは必ずしも遅発反応を予防できるとは限らない。
・喉頭浮腫は二峰性で40% 、遷延性で57% に認めたという報告もあり
・6〜8時間経過観察を。重症例は24時間。

アナフィラキシーの反応は文献によって言い方が違う。二峰性(ふたこぶラクダ)になって
くる。今の反応がおさまったと思ってもまたあとででてくる場合が5〜20%ある。又は1/3
くらいあると言われている。ステロイドは、今の反応を抑えるのではなく、4〜6時間後
の後の反応を抑えるために使う。または遷延性の長い慢性の蕁麻疹の反応の場合は
ステロイドはよい。今目の前の蕁麻疹を治すため・今の目の前のアナフィラキシーを治す
ためのステロイドの有用性は実は疑問である。では使ってはいけないのか?二峰性のもの
があるわけだから、使ってもよい。後の反応を抑えるのが大事。
喉頭浮腫は二峰性で40%に出現する 、遷延性で57% に認めたという報告もあるので、喉頭
浮腫も後からでてくることがある。だから全身性のひどい、強い症例はやっぱり経過観察
しないといけない。普通の二峰性の蕁麻疹は6〜8時間看ればよいが、ショックになったり、
喉頭浮腫など、すごい呼吸不全まできた症例は、やはり必ず24時間経過観察しないといけ
ない。抗ヒスタミン剤やステロイドは、2こぶラクダの2つめのコブを抑えるための薬だ
ということを頭に入れておかないといけない。経過観察の時間は知っておいて下さい。す
ごい悪かったアナフィラキシーの患者を帰すことはやめて下さい。

■難治性のアナフィラキシー
・エピネフリン、輸液、昇圧剤を使っても血圧が上がってこない!
・カテコールアミン抵抗性ショック!
 ☆グルカゴン
  =>β遮断薬使用中
  =>難治性ショック
  1〜5mg 静注

目の前のアナフィラキシーを治すためにやっぱり一番大事なのはエピネフリン。そして、
輸液も大事。それでも効かなかったら、カテコラミン(昇圧剤)を使いますよね。それでも
血圧が上がってこない。

・カテコラミンが効かない時は、何を使うか?
グルカゴンを使う。
[☆体内では、低血糖時に分泌され、貯蔵燃料を動員するホルモン。インシュリンの逆。]
グルカカゴンがなぜ効くのか?これは、交感神経を介さずにサイクリックAMP(cAMP) を増
やして効く。cAMPを増やすことによって心筋の収縮力を上げる。難治性のショックの時に
使う。エピネフリンが全然効かない時に使う。
βブロッカーを飲んでいる時はエピネフリンは効かない。それから何しても効かない場合
は試してみる価値がある。一投1mg 。1mg 使ってみる。効かなかったらもう一回使ってみ
る。ダメだったらもう一回使ってみる。効いてきたら、今度は状況によっては持続点滴で
1時間1mgとか、1時間5mgくらいのペースで点滴する。結構高い薬。(薬価2381円?) お金
のことも大事ですので考えておきましょう。

■蜂刺症
・蜂毒 50μg  致死量1500回
・アナフィラキシーは少量で発症
 2回目でアナフィラキシー 35〜60%↑
・毒袋は潰さないように取る!
・50回以上刺されたら、遅発性中毒+
 24時間観察を → 腎不全、肝障害、横紋筋融解症、DIC()

Kolecki P.,Delayed toxic reaction following massive bee envenomation.
Ann Emerg Med. 1999 Jan;33(1):114-6.
http://www.annemergmed.com/article/S0196-0644(99)70428-2/abstract

こんなことを知っていなくてもいいのだが、蜂は1回に50μg の毒が出る。これではすぐ
には死なない。アナフィラキシーが起こらない、アレルギーを持っていない人なら、1500
回刺されないと死ぬことはない。しかしアレルギー反応を持っている人は微量でも反応が
出る。1回目刺されてある程度反応が強かったという人は、2回目刺されてちょっと腫れ
るだけでもアナフィラキシーになる人が実は半分近くいる。35〜60% と言われている。な
りやすい人は何回も刺されるとどんどん悪くなる。予防がすごく大事。医師が「毎回治し
て俺は偉いなぁ」と思っていてはダメ。その人が次に刺されたらもっと悪くなる。それを
なんとかしなくてはいけないことを考慮しなければならない。
あと蜂(ミツバチ)は毒袋を残して逃げていく。刺された所を見ると毒袋と黒い針が残って
いる。
毒袋の筋肉はヒコヒコと動いている。毒袋にはまだ毒が残っている。それを抜くときに、
指で毒袋をつまんでジュッと毒を押して針を抜くと、余計反応が強くなる。絶対にそのよ
うな事をしてはいけない。昔の救急の教科書には「クレジットカードを出して、そぐよう
にして取りましょう」と書いてある。本当か否か疑問である。刺されて気が動転している
時に財布からクレジットカードを出すのは時間がかかるのではないかと思っていた。
Lancetに載っていた面白い研究があった。実際にクレジットカードを出して針をとった人
とつぶさないように指ではじいた人とどちらが効くか、ボランティアの大学生を使って調
べた研究。こういうスタディをぜひしてみたいものだ。早く取った方がやっぱりよかった
との結論。あたりまえだ(笑)。
これは、アナフィラキシーとは関係ないが50以上刺されると結構毒が入るので、遅発性の
中毒が起きる。何が起きるかというと、腎不全、肝障害、横紋筋融解症と結構こわいのが
起こってしまう。山ほど刺された人は、アナフィラキシーを別にして、毒の中毒がおきる
ことを注意する必要がある。(文献参照)

■蜂 Tips 蜂が嫌う、好む服は?
・服装
 ×黒、×花柄  ○白
・匂い
 ×香水、×匂いの強い果実、×発酵飲料、×アルコール
・エピペン ……携帯用
  1ドーズ 0.3mg
  キャップをはずし、大腿外側に刺入
  基本的に使い捨て

蜂がいるかもしれない山にピクニックに行くときに、どんな服装がよいか? 黒と花柄は
ダメ。黒は熊と間違えられる。熊は蜂蜜が好きだから、蜂の巣を狙う。だから蜂としては
熊はイヤ。だから熊を襲う。黒はダメ。花柄は蜜を集めたいから寄ってくる。だから白っ
ぽい服がよい。
匂いは、当然だが、匂いがいいとダメ。香水とか、匂いの強い果実、発酵飲料、
アルコールという匂いをプンプンさせて歩いてはダメ。
先ほど言ったが、蜂に刺されてアナフィラキシーになる人は、刺されるたびに、どんどん
悪くなる。病院に行くまで間に合わない時のためにエピペンがある。これは医師の処方が
必要。エピペンを打つとちょうど0.3mg 出る。ペン型でキャップを外し、先端の黒い所を
大腿の外側にポンとあてると、針が出る。針は22ゲージ。結構太い。1.7cmくらい出る。
医療者がこのことを知っていると「おぉこわい」と思ってしまう。
どうでもよい知識だが、中の薬液(エピネフリン)は2cc入っている。そのうちの0.3mgがは
いる。一回使ったら再使用(リユース)はできない。使ったあとは捨てるしかない。1回だ
けで効かない人がいるので2本処方されている人もいる。分解して使ったらいいじゃない
かというと、業者さんは「そう簡単には分解できませんよ」と言っていた。もし分解して
1.7ccとったものを飲んだらいいかというと、飲んでも効かないというデータがあるので、
分解しないで下さい。無駄な知識でした。

[☆加筆 蜂が毒針を刺した瞬間の写真と動画
[以下のページに、@蜂が針を刺した後に逃げる写真、A腕に毒袋と針が刺さった写真、
[B実際に刺した毒袋と針が抜ける瞬間の動画があります。
[ http://www.gekiyaku.com/archives/8920526.html

■その他のアナフィラキシー
・食品 → 1/3が二峰性に
  注意:scombroid fish poisoning(サバ科の魚中毒)はアレルギーじゃない。
  サバ科の魚に含まれるヒスタミン類似物質によりアナフィラキシー様症状を起こす場
  合がある
・ラテックス
  医療関係者 日本は1.7%(+アトピー3.6%) 二分脊椎症患者↑
  食べ物にも:アボカド、キウイ、バナナ、くるみ
  oral allergy syndrome(OAS:口腔アレルギー症候群)を併発する場合がある。
・ジャンガリアンハムスター
  リポカリン……馬、牛、鶏、猫にも+

Kevin J Kelly, et al.,Latex allergy: a patient and health care system emergency.
Ann Emerg Med 1998,32,723-729
http://www.annemergmed.com/article/S0196-0644(98)70073-3/abstract

その他のアナフィラキシーについて。食品の1/3 が二峰性になる。よく「青魚を食べて
蕁麻疹でましたのでこれアナフィラキシーですね」と言われるが実はこれは違う。
scombroid fish poisoningと言って、サバとかサバ科の魚にはヒスタミンが入っている。
ヒスチジン(histidine:C6H9N3O2)というアミノ酸が入っており、細菌感染とかによって
ヒスタミンに変わってしまう。口からヒスタミンを入れれば当然蕁麻疹になる。これは、
アナフィラキシーではない。だいたい魚釣ってすぐ冷凍しない場合、室温に置いて温度が
上がると細菌が繁殖して、ヒスチジンがヒスタミンに変わってしまう。ヒスタミンをたく
さん飲んだ場合は、抗ヒスタミン剤やステロイドを使えばよい。ヒスタミンをたくさん飲
んだ中毒ということ。文献的にはアナフィラキシーだったら、他にプロスタグランジンが
でるはずだからそれを調べれば差がわかるとある。あと、ラテックス。我々は知っておか
ないといけない。医療関係者は多くなっている。ラテックスアレルギーの人は食べ物と
交差がある。Oral Allergy Syndrome と言って、食べ物を食べて口がかゆくなったり、腫
れたりする反応がでやすい人がいる。アボカド、キウイ、バナナ、くるみが食べれないと
いう先生はラテックスアレルギーがいるかもしれない。アボカドはアボガドではなく、
アボカド。点々が抜けている。また、舌をかみそうだが、ジャンガリアンハムスター。
ジャンガリアンハムスターは口の中にリポカリンというタンパクがある。これでなる。
2004年9月 に会社員がジャンガリアンハムスターに噛まれて、アナフィラキシーで死亡し
た例があった。これは動物を飼っている人には有名な話。

■まとめ
・Dr.林のアナフィラキシーのABCD
    Airway
    Breathing
   shoCk
    Diarrhea
・エピネフリンの使用法に強くなる
・薬の効果発現時期を知る。
    エピネフリン、輸液、抗ヒスタミン剤、ステロイドの使用法をマスターしよう   

まとめです。Dr.林のアナフィラキシーのABCDは絶対覚えて下さい。Airway喉頭浮腫、
Breathingがやられるもの、喘息みたいになっているもの、Circulation、ショックになる
もの、Diarrheaおなかが痛くなる、このような場合は、早期にエピネフリンを筋注で使っ
て下さい。筋注が一番。薬の効果発現時期を知って、エピネフリン、輸液、抗ヒスタミン
剤、ステロイドの使い方をぜひ覚えて下さい。裏ワザとしてエピネフリンが効かない場合
はグルカゴンもあるということを覚えておいて下さい。
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posted by jemta at 19:31| 日記