2010年05月12日

BLSの重要なポイントNo3「胸骨圧迫の中断時間を最小にする」


BLSコースで紹介されているガイドライン2005の重要なポイントの3番目は、
「胸骨圧迫の中断時間を最小にする」です。
こんばんは。AHA 岡山 BLS JEMTA日本救命協会の久我です。

今回の投稿は、一昨日ご紹介したレポート
http://circ.ahajournals.org/cgi/content/full/111/16/2134
の中のFigure 4.の図
http://circ.ahajournals.org/content/vol111/issue16/images/large/19FF4.jpeg
について考えたいと思います。

Figure 4. Simultaneous recording of aortic diastolic (red) and right atrial
(yellow) pressures during CPR in which 2 ventilations are delivered within
4-second time period.
4秒間に2回の換気をしたときの拡張期の大動脈(赤色)と右心房(黄色)の圧力の同時記録

Hemodynamic Response to ideal Chest Compressions With Only 4 Seconds
for Ventilations 
4秒だけの換気を伴う理想の胸骨圧迫の血流力学的応答

Figure 4.は15:2のCPRをしているときの大動脈(赤色)と右心房(黄色)の圧力の同時記録で
す。胸骨圧迫を開始し、1回目,2回目,3回目,・・・15回目と回数を重ねていくに従って、
大動脈圧がどんどん上がっていっています。一方右房圧はあまり変わっていません。
冠灌流圧(かんかんりゅうあつ)(CPP: Coronary Perfusion Pressure)は拡張期の大動脈圧
から右房圧を引いたものです。Figure 4. では胸骨圧迫を重ねるにつれて、冠灌流圧もあ
がっていくことが容易にわかります。CPPは有効なCPRがされているかを示す重要な指標で
CPPが15 mmHg以上ある場合には、心拍再開が期待できるとされています。
http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/05/aha-074.htm
CPP が大きいということは、血流量(A)も増えることを意味します。
(A=CPP/R ;Rは血流抵抗)
100512_Fig4.jpg

上のグラフから、15回の胸骨圧迫が終わった直後から約4秒間の大動脈圧と右房圧の点
データをひろって、大動脈圧から右房圧を引いてその冠灌流圧を以下にプロットしてみま
した。


100512_CPP.jpg
15回目の胸骨圧迫が終わって、換気のために胸骨圧迫を中断するとCPP が下がっていく
のがわかります。このCPP が下がっていく時間の中で、右房圧と大動脈圧に、2つの山が
あります。これは2回の換気です。1秒間、空気を送っていると肺が膨らんで、心臓を押
します。この2つのピークは右房圧の方が大きいようですので、肺が膨らむと、心室より
心房の方が強く押されるようです。胸骨圧迫を止めると40mmHgあったCPP はすぐに下
がりますので流れる血流は少なくなっていきます。そして換気をプー、プーとしている間
はその分CPPが一時的に少なくなりますので血流も減ります。

このグラフは、Gordonの図からデータの点をひろったので、誤差があるかもしれませんが
胸骨圧迫を中断するときに、CPP が下がっていく傾向はわかります。下がりきる前に胸骨
圧迫を再開すれば、その時点での圧力から上がっていくことが期待されます。下がりきっ
てから胸骨圧迫を再開すれば、CPPが上がるまで時間がかかります。(もし、1回の換気で
十分確実に換気できれば、30:2より30:1の方が効果的なようにも思えます。)
この図からも BLSの重要なポイントのひとつである「胸骨圧迫の中断時間を短くする」を
示すことができると思います。


posted by jemta at 23:51| 日記